ロバート・シラー:住宅価格は自己実現的予言

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、米住宅ブームについて警告している。
いつ終わるかはわからないとしつつ、住宅価格はこれ以上大きくは上昇しにくいだろうと予想している。


「私の収集したデータによれば、現在は現代における3番目に大きな住宅ブームだ。」

シラー教授がThe New York Timesへの寄稿で表明した。
資産価格の実証研究の第1人者が、住宅ブームの拡大に警鐘を鳴らしている。
教授の名前を冠する住宅価格指数によれば、2012年2月の底から今年9月までで米住宅価格は53%、インフレ分を差し引いた実質ベースでも40%も上昇している。

S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index
S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index

それでも現在のブームはまだ(消費者物価統計の始まった1913年以降で)3番目にすぎない。
では1・2番目はいつなのか。

1) 1997/2-2006/10 サブプライム/リーマン危機前
住宅が投機の対象となり、実質74%の価格上昇が起こった。
ブームが崩壊すると中古住宅価格は35%下落し、世界を金融危機に陥れた。

2) 1942-1947年 第二次世界大戦と戦後ベビーブーム
5年で実質60%の価格上昇があった。
住宅需要が高まるとの観測や政府の補助が価格上昇を生み、ブーム後も価格はさほど下がらなかった。

現在の住宅ブームは2位、1位に迫るのだろうか、それとも途中で萎み始めるのか。
最近の住宅関連統計には弱さを示すものも出始めている。
先行指標はいずれもこの数か月低下を始めている。
しかし、シラー教授は予断を許さないという。
教授は、住宅ブームの発生要因を4つ挙げた。


  • 低金利: 住宅ブームにはつきものの要因
    金利は上昇を始めているが、その効果にはタイムラグがある。
    実際、2012年から今年9月までの住宅価格上昇期に米金利は上昇していた。
  • 経済成長
    中古住宅価格は経済成長に反応しないことがわかっている。
    1950-2000年の50年、実質GDPが6倍になる中、中古住宅価格は実質20%しか上昇していない。
  • 2008-09年からの反動: オーバーシュートからノーマルへの回帰
    しかし、今年9月の指数は名目で2006年ピークより高く、実質でも近づいており、ノーマルへの回帰とは言えない。
  • 大統領の政策
    ブッシュ(Jr)大統領は持ち家対策を行い住宅価格上昇要因となったかもしれないが、トランプ大統領の減税は住宅保有者には不利だったかもしれない。

シラー教授は、ブームの終わりが近いとの見方に傾いているようだ。

さらに大きな利上げがなくても、中古住宅価格の上昇には限界があるように見える。

こう考える理由は、とても行動経済学者らしいものだ。
住宅価格の形成は、ジョン・メイナード・ケインズが1936年『一般理論』で議論した「伝統的な評価方法への単純な信仰」によっており、「自己実現的な予言」になっているからだという。
たとえば、「伝統的な評価方法」が年5%の上昇であるなら、売り手も買い手もそれで計算された価格に満足してしまうのだ。
この信仰が続く限り、住宅保有者は年5%の利回りを得ることとなり、これが「『アメリカン・ドリーム』の一部」になっているのだという。

この信仰が上振れた時にブームが起こり、その幻想から目覚める時にブームは終わる。

私たちは再び米市場最大規模の住宅ブームを迎えている。
・・・これはもちろん永遠に続くことはできない。・・・
データは、いつ価格がピークアウトするか、悲劇的な暴落を起こすのかを教えてはくれない。
わかっていることは、米国の歴史の中でめったにないスピードで価格が上昇してきたということだ。


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