ロバート・シラー:パッシブ運用はただ乗りの擬似科学

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、パッシブ運用やインデックス運用について否定的な意見を述べた。
コストの安いパッシブ運用がアクティブ運用を駆逐すれば、健全な市場の形成が阻害されるとした。


「パッシブ運用についての問題は、それがまさに他の人(の努力)へのただ乗りであることだ。」

シラー教授はCNBCでパッシブ運用について語った。


Robert Shiller on what worries him about passive investing from CNBC.

シラー教授はパッシブ運用に内在するパラドックスについて語る。

「『自分は市場よりいいリターンを取ろうとは思わない。
市場はすべてを知り尽くしている。』
という人がいるが、それなら、市場はどうやってすべてを知っているのか。
もしも市場よりいいリターンを取ろうとする人がいなかったら、あるいは少ししかいなかったら。」

証券投資論の初歩の授業では、市場が効率的であるとの前提を置かれることが多い。
市場はすべてを知っているという仮定だ。
その仮定のもとでは、誰かが市場を出し抜こうとしてもできないことになる。
誰かが出し抜こうとすれば、それはすぐさま市場に反映され、収益機会は消えてしまう。
この出し抜こうという人がアクティブ運用者である。


一方、効率的市場仮説を信じる人は、アクティブ運用者のように額に汗をかいても報いられないと考える。
そこでの合理的な投資行動は、マーケット・ポートフォリオ、具体的にはその代用としての市場株価指数連動ファンドへの投資となる。
こちらを選択するのがパッシブ運用者だ。
シラー教授は、パッシブ運用者がアクティブ運用者の努力にただ乗りをしていると言っているのだ。

パッシブ運用者が前提とする効率的市場仮説とは、無数のアクティブ運用者の存在があってこそ成立しうる。
つまり、効率的市場仮説とは、効率的市場仮説を信じない多くの投資家・トレーダーによって成立しているのである。

シラー教授はこうした矛盾を説明した後、米社会への誇りとでもいうべき信念を吐露した。

「この国の強さとは、人々が個々の企業を見つめてきたことの上に築かれたのだと考えている。
人々は個々の企業にそれぞれの意見を持っていた。
インデックス投資は、私たちの知性を薄めてしまうように思う。」

このままパッシブ運用が優勢となったら10年後にはどうなるかと尋ねられると、シラー教授はそれに答えるかわりに100年前どうだったかを話した。
100年前、インデックス投資が語られることは極めてまれで、常に個別銘柄が話題であったという。
こうした先人の努力の積み重ねが市場の効率を高めてきた。
そして皮肉にもパッシブ運用を生み出し、シェアをどんどん奪われている。
教授の結論はこうだ。

「インデックス投資が完璧で、投資対象の事業を検討するのではなくコンピュータ・ソフトだけあれば用が済むというのは擬似科学のようなものだ。」


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