ロバート・シラー:トランプ革命とダボス会議

ロバート・シラー教授が、米国をはじめとする世界の退化を心配している。
そのリーダー役であるトランプ大統領のダボス会議出席が見ものだと言う。


「トランプは不幸なことに1つの革命だ。
ナショナリズムを再び肯定し、アメリカ人が他国の人たちと同レベルであることを示してしまった。」

シラー教授がCNBCに語った。
教授は心から心配しているようだ。
中間選挙で民主党が下院を取り返しトランプ大統領を無力化することに期待しているという。

シラー教授はこれまで努めて政治的に中立なスタンスをとってきた。
それは、教授の政治信条から出たことではあるまい。
日頃の教授の発言からは社会共通の利益を重視する考えも読み取れるから、あきらかに民主党に近いように感じられる。
それでもこれまで中立的なスタンスを堅持してきたのは、行動経済学者として事態をなるべく客観視したかったからだろう。

シラー教授は、トランプ大統領が今年ダボス会議に初出席することに興味を寄せている。
ダボス会議と言えば、グローバリズム推進者の巣窟だ。
アメリカ第一主義を唱え、保護主義さえ辞さない大統領はそこで何を話すのか。
奇しくも今年のダボス会議のテーマは「分断された世界で共通の未来を拓く」である。


「私が想像する限り最も(トランプに)共感しない聴衆たちに(トランプは)彼流のレトリックを試すことになる。
彼は共感してくれる聴衆が好きだから、今回どうやって切り抜けるのか予想がつかない。」

シラー教授は常々、社会におけるナラティブ(その時々に人々を支配する物語)の影響力に注目・警戒している。
経済で言えば、バブルもバブル崩壊もナラティブが大きな役割を占める。
ナラティブは社会のあらゆる変化でも影響力を及ぼす。
それなのに、経済学の世界はその重要性を見過ごしてきたと嘆く。

「報道の人たちはナラティブ(物語)が重要なことを知っているが、経済学者は理解していない。
経済学者たちは、中央銀行や財務省をあやつる尊大な人物がすべての物事を引き起こしていると考えているようだ。」

ナラティブはポピュリズム、国家主義、人種差別主義、地域主義の世界的台頭でも原動力の1つとなった。
有能な扇動家であるトランプ大統領は、たくみな詭弁でナラティブを動かしたのだ。
シラー教授は、経済学がこうした働きを理解し一刻も早く有効なブレーキかける必要があると言う。

「こうした分断は、従来からの分断を再度主張したものであり、歴史を逆行しているようなものだ。
私たちは第2次世界大戦の恐怖の後の啓蒙の時代にいた。
しかし、今ではその記憶がある人もいなくなり、逆戻りして同じ間違いを起こしかねない。」


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