ロバート・シラー教授が挙げた意外な灰色のサイ

ロバート・シラー教授が、すでに私たちが目にしたある出来事について注意を喚起している。
60年以上前の似たような出来事と比較して、経済・市場の転換のきっかけになりうると示唆した。


米国の年月の約1/3は景気後退期だ。
今後18か月での景気後退の確率もそんなものだろうが、もう少し高くなるかもしれない。
状況を考えるとたぶん1/2ぐらいだろう。

シラー教授がCNBCで米景気後退の確率が平均より高まっていると話した。
なぜ、確率が高いのか。
教授は4つの要因を挙げている。

  • 住宅価格: 名目で史上最高、実質でも極めて高く、史上3番目のブーム。
  • 強気相場: メディアでも最長記録であると注目されている。
  • ゼロ金利: 史上最長のゼロ金利近傍、今もかなりの低金利。
  • 景気拡大: 6月まで継続すれば史上最長に。

「こうしたすべてのことは、多くの人が現状がブームの終期だと考えていると示唆している。
歴史は繰り返すものであり、景気後退を迎える確率はかなりある。」

シラー教授は一方で、景気・市場のサイクルを予想することが誰にとっても至難の業であると指摘する。
あまりにも多くの要因が影響を及ぼしており、まったく予期していなかったサプライズがサイクルの方向性を逆転させてしまうことがあるからだ。
教授はそうしたサプライズとして、トランプ大統領の誕生やカリフォルニア山林火災などの例を挙げた。
さらに今後サプライズとなりうるものとして、トランプ大統領の元弁護士マイケル・コーエン被告の下院公聴会での証言を挙げている。

もう1つまだそうなっていないがそうなりうるのが、トランプ大統領にかかわる一種の分断と強い不合意だ。
・・・
コーエン被告が犯罪者である証拠と見るか、善良な人間が陰謀を指摘したと見るかによる。
これは今まで経済に影響してこなかった。
なぜかなのかはわからない。

先月27日に行われた公聴会はほとんど市場に影響を及ぼさなかったようだ。
しかし、シラー教授はこれを1954年4-6月の米陸軍-マッカーシー公聴会と重ね合わせている。
マッカーシズムで有名なジョセフ・マッカーシー上院議員が、陸軍に共産党のスパイがいると糾弾した公聴会だ。


「世論はこの公聴会証言で逆転した。
では、この結果、株式市場には何が起こったのか。
ブームがやってきた、すばらしかったんだ。」

陸軍-マッカーシー公聴会前後のダウ平均
陸軍-マッカーシー公聴会前後のダウ平均

シラー教授がマッカーシズムを引き合いに出したのは、それが米国の1つの分断の時代だったからだ。
分断の時代にありがちなことだが、景気は後退期(グラフのグレイ部分)にあった。
公聴会が始まる時、ダウ平均はすでに底を打っていたが、景気はまだ後退期だった。
それが、公聴会が始まるとほどなくして景気も拡大期に入り、市場は大きく伸長した。

では、マッカーシー上院議員には何が起こったのか。
公聴会はテレビ中継され、多くの国民が同議員を目にすることとなった。
その態度は攻撃的、侮蔑的、高圧的で品位にかけ、世論は大きく転換することとなった。
ついには同じ共和党の議員から譴責決議案を提出され、可決されている。
同議員は失脚し、3年後に病死した。

シラー教授は、トランプ大統領にかかわるイベントが予想のつかない影響を経済・市場に及ぼしうるといいたいのだ。
コーエン被告の証言はすでに皆が目にしているから、いうなれば《灰色のサイ》なのだろう。

「私は答えを持っていない。
こうしたことは予想が難しいんだ。」

確かに、こうしたイベントの帰趨・影響を予想するのは難しい。
投資家はもちろん、政治評論家といういかがわしい肩書の人たちにとっても同じこと。
だから、予想がつかないことを前提に構えることが大切だ。

1つのヒントはレイ・ダリオ氏がかつて話していた。
投資活動において賭けていいのは、自分が得意なイベント/結果の場合だけ。
得意でないイベント/結果に対しては、中立またはリスク・バランスを取るべきという考えだ。


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