レイ・ダリオ:部分最適の弊害が全体を害する

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Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏が、トランプ大統領の行動様式・最近の中国の人民元管理についてコメントしている。
ダリオ氏は今年3月、過去のポピュリズム台頭についての分析を公開している。


「1) いったい誰(例えば、米製造業の労働者)のための最適化を求めているのか。
 そして、それを誰の費用で行おうとしているのか。
2) 自分はトランプが守ろうとしている一部(例えば、米製造業の労働者)の側なのか、失う側(例えば、移民、トランプによる予算の変更で恩恵を失う人たち)なのか。
3) トランプが選択する対立とは協力より有効か、有害か。」

トランプを支持すべきかどうか迷っている人たちの脳裏にはこんな迷いがよぎっているはずとダリオ氏は自身のSNSで書いている。
支持・不支持をまだ迷っている人がいるのか、といぶかしむ読者もいるだろう。
確かに、トランプ大統領に対する人々の好き嫌いははっきりしている。
しかし、大統領が何か妙な決断を下すたびに、トランプ支持だった人の中にダリオ氏の言う迷いを抱える人は増えているのだろう。

ダリオ氏は冷静に大統領の行動様式を分析している。

「高次レベルの観点では、全体にいいこと・一部にいいことの間での選択、協調と対立の間での選択をする際(トランプ大統領は)一部と対立を選択する強い傾向がある。
『全体』とは全体の環境システム、全世界のコミュニティ、全米を表し、一部とはおそらく助けようとしている一部の米国を意味している。」


まさにマーケターの行動様式だ。
人気を狙い票を狙うにはターゲット・セグメントを定め、自身のバリュー・プロポジションを主張する。
視聴率を稼いだり、モノを売ったりするには有効な手段だが、大国の政治にはとんと不向きな行動だ。
当選までこうした手法を用いるのはやむを得ないのかもしれないが、当選後も続ければ全体の利益を損ねる。
その余波はターゲット・セグメントも逃れえないはずだ。

ダリオ氏の考えは真逆だ。
「パイを大きくするために協力によって全体を最適化し、協力的・競争的にパイを分割する」のが同氏の望む道。
パリ協定離脱に触れながら、大統領の行動を心配する。

「私たちは私たちの全体のエコロジー、全世界のコミュニティ、全米につながっていると信じている。
それらと共存関係を築く価値があると信じている。
・・・
ドナルド・トランプが協調ではなく対立に動くほど、大統領の地位が揺らぎ私たちの大半に影響が及ぶ。」

ダリオ氏は中国の最近の通貨政策についてもコメントしている。
中国政府は5月26日、人民元の中心レート算出方法に変更を加えると発表した。
この変更で人民元相場は元高に振れた。
ダリオ氏はこの中国政府の「人民元ショートをスクイーズした動き」を「賢い」と評価した。
この行動が

「a) 中国政府の力を誇示し
b) 人民元への信認を失いつつある人の考えをくじき(そして人民元売りの意向を減らし)、国際収支・為替の安定化に寄与し
c) 信用引き締めのための金融引き締め政策とよく協調する引き締め効果を生むことができる(これは現在適切だ)」

からだという。

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