レイ・ダリオ:控除廃止が格差を拡大する

Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏は、共和党の税制改革案が地域・所得による格差を拡大させると分析している。
ある控除制度の廃止が格差拡大を引き起こすのだという。


「我々の大局観では、限界部分において税制改革が地方税(SALT)の高い場所に重大な悪影響を及ぼし、地方税の低い場所に好影響を及ぼす。
さらには、企業と株主(望むらくはトリクルダウンの及ぶ人たち)にも好影響だ。
地方税の低い州の企業はダブルで魔法の恩恵を受けることになる。」

ダリオ氏はSNSへの投稿でこう結論した。
ダリオ氏が注目したのは、共和党法案に織り込まれた地方税控除廃止である。
米国では連邦税の計算において、地方税(固定資産税、所得税、売上税など)支払い額を控除できるが、これを廃止しようというものだ。
廃止にはそれなりの理屈がある。
地方税を高くすれば連邦税が減るというのでは、その地方ばかりが得をする。
その地方が得をした分は、連邦政府の懐を通して他の地域にしわ寄せがよることになる。

ただし、この控除が連邦税に関するものであることを忘れてはいけない。
地方税が低い地域の住人でも、他の地域に支払った地方税(固定資産税、売上税など)を控除できることから、廃止には反対の多い制度であった。


地方税控除を廃止すれば、地方税が高い地域の納税者には大きな打撃だ。
しかし、これだけなら「ダブル」ではないはず。
もう一つの打撃とはなんであろうか。
ダリオ氏は、富裕層が地方税の高い地域から安い地域へ移動する点を指摘している。
これが、格差拡大を助長する。
地方税の高い地域では多くのマイナス要因に見舞われる:

  • そもそも地方税が高い理由は財政が厳しいことにあった。
  • 控除廃止で住民の税負担が増す。
  • 富裕層が去り、税収がさらに減る。
  • 富裕層が減り、消費が減少し不動産価格が低下。
  • 残った富裕層とそれ以外の層の間で対立が増す。

ダリオ氏はこうした変化が「不可避かつ自己実現的」に進むと書いている。
この裏側では、地方税の低い地域が潤うことになるのだが、仮に減税合戦が起こってしまえば、地方税の安い地域もうかうかしていられなくなる。
結局は、地域内での富裕層・中間層・貧困層の格差・対立が拡大しかねないという。

ダリオ氏の危機感は税制がいかにあるべきかという観点だけではないかもしれない。
税制改革が地域間格差を拡大するなら、それは米資産市場にも大きな影響が及ぶだろう。
指摘された不動産市場はもちろん、地方債市場などにも及ぶはずだ。
デトロイトを思い出す人も少なくないのではないか。


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