レイ・ダリオ:悲劇だ

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Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏が、米国で成立した税制改正案についてコメントしている。
計量モデルを駆使するダリオ氏が算出した効果(推計)がショッキングだ。


悲劇だ。

ダリオ氏は自身のSNSで、米共和党の税制改革案を評した。
同氏は米社会におけるトップ40%とボトム60%の格差拡大について危機感を呈してきた。
今回の税制改革案について共和・民主 超党派の検証委員会を設け、格差への影響を検証すべきという。
そうすれば、なぜ「悲劇」なのかわかるはずと示唆している。

問題は格差だけではない。
政策としての有効性もそうだ。
ダリオ氏は米国が財政政策を必要としていることには同意している。
そして財政政策には2つの選択肢があるという。

a) 積極投資: 投資採算が完全には確認できない場合でも公共投資を実施する。
(一部の投資で20-30%の採算割れが発生する。)
例えば、地下鉄網を建設して、15-20年で20-30%を消却する。
国で言えば、中国。

b) 慎重姿勢: 採算割れリスクの回避のため最小限の公共投資にとどめる。
例えば、地下鉄網を持たない。
国で言えば、ロシア。


共和党はインフラ投資より減税を先行した。
つまり、現状はb)だ。
トランプ大統領は選挙中インフラ投資の拡大を公約していたが、それはPFIなどを用いる、いわば「真水」のない公共投資であった。
PFIが可能な(つまりコマーシャル・ベースに乗るような)投資ならば、やれるものはすでにやられているだろう。
共和党は小さな政府を望んでいるから、来年以降インフラ投資が議論されてもa)を望むことはない。
これにダリオ氏はいら立っている。

「この2つの選択肢の仕組み・帰結を見れば、債務が自国通貨建てである限り、選択肢a)がb)よりよい選択だ。
・・・
減税法案は短期的に経済成長を刺激するだろう。
しかし、米生産性を停滞させている主たる課題の分野で財政支出し直接的に刺激するやり方と比べると、長期的には得るものが少ない。」

今回の税制改革には評価すべきところもあるはずだ。
複雑な控除の仕組みを簡素化できたなら、それを一概に否定するべきではない。
しかし、概して言えば、金持ちと企業を手厚く優遇するものであるのも事実だ。
法人税率が下がれば米国に仕事が戻って来るという議論もかなり疑わしい。
そもそも、多国籍企業はさまざまな控除を用いて出来上がりの税率を下げてきており、今回の改正での負担軽減はさほど大きくない。
それを知りながらも、市場は減税という材料に酔いしれてきた。

世界最高のヘッジ・ファンド、計量モデルを操るブリッジウォーターの総帥は驚くべき推計を明かしている。
この数字は、市場が織り込んできた期待と擦り合っているだろうか。

税制改革は典型的には税引後利益を全体で約0.5%上昇させる。
これは、ほぼ同金額の財政赤字増加(これはコストなしでは済まない)によって賄われることになる。


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