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レイ・ダリオが3月までの世界市場下落に賭けている!?:WSJ
2019年11月23日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、めずらしくメディア、しかもウォール・ストリート・ジャーナルに対し怒りを露わにしている。


ウォール・ストリート・ジャーナルが「ブリッジウォーターは市場下落に大きく賭けている」という記事を書いた。
これは間違いだ。
明言するが、株式市場の下落に私たちはネットでそんなに賭けていない。

ダリオ氏が22日、自身のSNSで抗議の意思を表明した。
同氏が抗議したWSJ記事はこう始まる。

「事情に詳しい筋によれば、ブリッジウォーター・アソシエイツは、3月までに世界中で株式市場が下落するのに10億ドル超を賭けている。」

なるほどこれはセンセーショナルな書き出しだ。
WSJの記事とあって、他のメディアも同記事を引用し報道した。

ダリオ氏がここまで不快感を明確に、かつ名指しで示すのはめずらしい。
その理由についてもダリオ氏は説明している。

記事を書いたジュリエット・チャン(Juliet Chung)には、私たちが株式市場に対し弱気の見方を持っていると伝えるのはミスリードになると説明した。
それなのに、結局出てしまった。

記事が出る前に弱気なわけではないと断っておいたのに、WSJはそれを聞き入れなかったわけだ。
ダリオ氏がポジション・トークや偽りで投資家を操るという印象はない。
むしろ、同氏は短期的見通しを明かすのを好まないタイプのCIOだ。
一方で、WSJもそこらの三文メディアではない。
彼らなりの言い訳があって出した記事なのだろう。

では、この齟齬はどこから生じたものだろうか。
1つほぼ間違いないのは、日頃のダリオ氏の中期的予想が、WSJ記者に《ダリオ氏は弱気》との先入観を植え付けていたのだろう。
さらに、記者は何らかの理由(政治、受け等々)で株価下落と書きたい気持ちだったのかもしれない。
しかし、これだけの理由で、ダリオ氏が否定する記事をWSJが出したとは考えにくい。

では、WSJはなぜ強行したのだろう。
言うまでもなく、消息筋という情報源が存在しており、その事実により言い訳ができるからだ。
では、この消息筋とは何者なのか。
2つすぐに思い浮かぶ勘繰りがありうる。

  • ブリッジウォーター社内か、それに近い人たち(証券会社、大口投資家など)が、市場に影響を及ぼすことを目的にポジション・トークとしてリークした。
    ダリオ氏は日頃から社内において《過激な透明性》を求めているから、仮に社員によるリークなら、その人には悲惨な末路が待っているだろう。
    つまり、社員の可能性は低いだろう。
  • ブリッジウォーター社内か、それに近い人たちが、不用意にショート・ポジションだけをWSJに話してしまった。
    その際のプット等の期限が3月だった。
    ロングはForm 13Fを見ればわかる話なので、こういう取材も起こりうるかもしれない。

いずれの場合でも、記事が出た後にダリオ氏が、ネット・ショートは大きくないと言っているのだから、WSJ記者は(確信犯とはいえ)顔に泥を塗られた形だ。

ダリオ氏にはこの手の騒動で苦い思い出がある。
昨年1月に同氏が「市場は噴き上がる」とサイクル終期の《最後のひと上げ》を予想した時だ。
不運なことにその後相場は急変、予想とは逆に調整局面を迎える。
その中で、ブリッジウォーターはビッグ・サイズのファンドを機敏にネット・ショートに転じ、荒波を乗り切った。
ここで、ダリオ氏の最後のひと上げ予想がポジション・トークだったのではないかと一部から批判されたのだ。

ダリオ氏は懲りたと見え、極力短期的な市場予想を口にしなくなった。
さらに、ブリッジウォーターのポジションの一部から同社のスタンスを推測すべきでないと釘を刺している。
なにしろヘッジ・ファンドなのだから、ショートもあればロングもある。
本当のポジションは全体を見比べないとわからないからだ。

私たちが生きている今という時代では、多くの記者が何よりもセンセーショナルな見出しを求めている。
事実が見だしに合っていなくてもお構いなしだ。
読者は、私を信じてもいいし、WSJ記者を信じてもいい。
私の方を信じていいとわかることを祈っている。

見出しだけの話ではないだろう。
記事の内容も本当に信じてよいものか。
でも、これはメディアの進化でもある。
かつては大手メディアが報じたものは唯一無二の真実と勘違いされることもあったが、今はそれを覆す方法が人々に与えられている。
(もちろんそれは諸刃の剣でもある。)
今回もその一例だ。

もっとも、ご本人は気づいてないのかもしれないが、ダリオ氏だって日頃なかなかセンセーショナルな発信をされている。

ショート・ポジションの内容を「プット」と明記し再掲しました。


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