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リスク・ヘッジすべきリスクが違っている: ブリッジウォーター

ブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏は、サイクルが終期に向かっているとしながら、今後備えるリスクはこれまでと異なるものになると語っている。


今回の危機で以前の危機から変わった大きな点は、政策決定者による対応の性質だ。

ジェンセン氏がBloombergで、危機が起こるたびに当局の対応の性質が変化してきたと指摘した。
2000年のテック・バブルでは利下げ、2008年のリーマン危機では貨幣増発による資産買入れ、そして今回は貨幣増発による所得補償だ。
ジェンセン氏は、同社がMP3と呼んでパンデミック前から予想してきた今回の対処法が強力なツールであることを認める一方、それがアンバランスを生むとも指摘している。

これは、打ち消す効果を持つ供給を生むことなく経済に作用する。
通常、誰がが働いて所得を得る場合、それは供給、さらに同時に需要を生み出す。

ジェンセン氏は、MP3の特殊性を説明する。
通常なら、需要を生むには所得が必要で、所得を生むには生産(供給)が必要だ。
だから、総需要と総供給のバランスは大きくは崩れにくい。
しかし、今回のパンデミックでは、貨幣が増発され、それを政府が国民に配った。
供給がない中で所得だけが補償され、需要が保たれている。
供給が不足したままで需要を生み出すことで在庫は減り、インフレを押し上げる。
ジェンセン氏はこのやり方を、インフレを促し経済回復を進める上で「強力な武器」だとする一方、伝統的政策手段に比べ「はるかにインフレ的な武器」でもあると指摘した。

ジェンセン氏は、物価目標から上振れたインフレの動向を心配する。
FRBは貨幣を増発し信用や所得の不足を補うことはできるが、現在必要とされている供給を生み出すことはできないためだ。
にもかかわらず、同氏は、FRBの金融政策正常化が緩慢なものになるだろうという。
2018年の躓きに懲りたはずからだ。
結果、バブルに発展する確率は高まり、インフレは高止まりし、FRBはかえって予想より速い引き締めを迫られることになるという。
ジェンセン氏は、サイクルの観点から現状を語っている。

政策決定者の対応は超高速だった。
市場のリバウンドは以前の危機よりはるかに速かった。・・・
経済は明らかに市場より遅いが、以前よりは速く回復している。
だから、供給が不足し莫大なペントアップ需要がまだある中で、急速にサイクルが終期に進もうとしている。

通常、長い時間かけて進むはずのサイクルがあっという間に進み、終期に差し掛かっているというのだ。

市場では、数か月前までは現在の局面が初期から中期とする意見が大勢だった。
昨年3月の底から1年余りしか経っていないから当然だ。
それがあっという間に後期・終期に向かいつつあるとの見方がでてきた。
このところ長期化したといわれていたサイクルだが、今サイクルの特異な背景を考えれば例外であっても驚くことではないだろう。
仮にサイクルの終わりが近づいているのなら、投資家は警戒モードを高めないといけない。
いつものサイクルならば、この段階で注意すべきは経済・市場におけるデフレ傾向だが、今回はそうでないかもしれない。

ジェンセン氏は今後、名目GDP成長の恩恵を受ける投資先が相対的に健闘するとし、逆にアンダーパフォームが見込まれる投資対象の特徴をいくつか挙げている:

  • 流動性の恩恵を受けてきた。
  • 存続のための流動性を自ら生まず、注入を受ける必要がある。
  • 利益を計上していない。
  • 利益が名目GDP・インフレとともに増えない。

ジェンセン氏が名目GDP成長を持ち出した理由の1つは、それがインフレの上昇要因となるためだ。
過去のほとんどの米サイクルの終了は、FRBの金融引き締めとともに訪れた。
ジェンセン氏は、仮にFRBが金融政策を予想以上に引き締めるとすれば、それは必要に迫られるためだとし、そこでいう必要とは通常インフレ上昇だ。
名目GDPに沿って増価する投資先なら、実質成長の恩恵を取り込み、インフレ分も稼いでくれるというわけだ。
同氏は、ヘッジ・ポートフォリオの典型例を話している。

ほとんどのポートフォリオよりヘッジを高めるとすれば、実体経済におけるキャッシュフローを取り込み、米国債のようなものをショートすればよい。

ジェンセン氏によれば、世のほとんどのポートフォリオが現在の主たるリスクに対してヘッジが不十分だという。
同氏によれば、現在の主たるリスクはこれまでのようにデフレではない。
なぜなら、デフレに対しては当局に(妥当かどうかは別として)策があり、その効果(と弊害)が実証されているからだ。

デフレになれば当局は貨幣を増発し支出し、物価に影響を与える。
問題はスタグフレーションであり、それが真のリスクだ。

一般の投資家がジェンセン氏のアドバイスにしたがう気持ちになっても、米国債をショート(これは借金するのと似た効果を持つ)するのはそれなりに勇気がいるし、コストも少々かかる。
同氏は、こうしたポジションを作るのが難しい投資家にも、少なくとも地域と資産クラスで可能な限り分散投資すべきとアドバイスする。

最後にジェンセン氏は、より具体的にファクターについて尋ねられている。
この20年あまり投資家が好んできたグロースだ。
グロースは名目GDP成長の恩恵を受けるのか否か。
同氏の答は条件付きYesだった。

同分野では基本的にインフレ圧力に沿った価格設定がなされ、コストが存在しない。
すべての銘柄ではないので、こうした供給制約のある環境下で過去価格設定がコストに対してどのようななされたか検証すると良い。


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