ラグラム・ラジャン

 

ラグラム・ラジャン:実体経済が改善しなかった

前RBI総裁 ラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、週刊エコノミストのインタビューを受けている。
その中から印象的な言葉をいくつか紹介しよう。


しかし、QEと実際の経済活動に強い因果関係は見られないのだ。

リーマン危機後、FRBは3度にわたり量的緩和を実施した。
危機に対して速やかに大胆な金融緩和でのぞんだQE1には相応の大義名分があった。
しかし、その後FRBはQEを終えることが市場・経済に反動をもたらすことを思い知らされ、QE2・QE3の実施に追い込まれた。
ラジャン教授はQE2・QE3について明確に「支持していない」と語っている。
QEが長期金利を低下させ、市場・経済に何らかの影響を及ぼした点を認めつつも「モノづくりなど真の経済活動が増えておらず、金融分野でのリスク引き受けが伸びた」だけと問題点を挙げている。
量的緩和政策はそれだけでは流動性の罠を回避できなかったのである。

十分な注意を払われていないのがシャドーバンキングだ。

強化された金融規制によって銀行の健全性が増したのは事実だろう。
しかし、シャドー・バンキングについては十分に手が入ったとは言いがたい。
サブプライム危機とはMBS等を現債権とした証券化商品の積み重なりによって起こった危機であった。
この証券化商品こそが当時問題だったシャドー・バンキングなのであり、一般にシャドー・バンキングと言えばその種類は多岐にわたる。
私たちが慣れ親しむ投資信託でさえそれに分類できるし、実際最近ETF拡大にともなうリスク増大が心配されている。
ラジャン教授は「過剰なリスク引き受けが銀行から別のセクターに移っただけ」と心配している。


まだ大きすぎて潰せない銀行がある。

リーマン危機後の金融規制強化によって、金融機関は体力に合わせた業務内容に限定するよう求められた。
これが、巨大銀行と中小との格差を生んでしまったとラジャン教授は説明する。
巨大銀行が再び過度なリスクをとらないよう、役員・従業員のインセンティブのあり方を規制すべきという。

ジェローム・パウエル次期FRB議長は先月、経営不振の金融機関を解体させる権限を当局が保持する限り、もはや《大き過ぎてつぶせない》銀行はなくなったと語った。
パウエル氏はこれまでFRBの中で金融規制を一手に扱ってきたインサイダー。
ラジャン教授との見方の相違は少々気になるところだ。

仮想通貨の流動性プレミアムは過大評価されているように見受けられる。

ここでの「流動性プレミアム」とは「流通するがゆえに支払われる上乗せ手数料」のことと注記されている。
そもそも決済手段としてさしたる実績のない仮想通貨に大きな流動性プレミアムは見出しにくい。
では、プレミアムの下にあるはずのベースの価値はどの程度なのだろう。
ラジャン教授は、仮想通貨の現状がチューリップ・バブルにおけるチューリップに似ていると話している。
つまり、ベースの価値も流動性の価値もたいしたものにはならないはずだ。


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