ラグラム・ラジャン

 

ラグラム・ラジャン:完全雇用下での財政拡大

前RBI総裁 ラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、金融政策正常化の必要性を主張した。
金融システムのリスクが大きくなる前に、ゆっくりと慎重に正常化を進めるべきと言う。


「日本経済も巡航速度で成長している。
労働人口が年1%減少している国が毎年1.5%成長するなら素晴らしいことだ。」

ラジャン教授がBloombergのインタビューでこう語った。
日本を含め、世界中で経済が同時拡大していると指摘したのだ。
この同時拡大が市場に楽観を与え、資産価格の上昇が続いていると解説した。
サブプライム危機/リーマン危機をいち早く予言したことで知られる教授は、足元の資産価格上昇に2つの懸念を感じている。

金融面: いつインフレがやってくるのか?
本当に力強い経済成長が実現すれば、賃金上昇・物価上昇が起こり、金利が本格的に上昇し、資産価格に影響を及ぼす。

財務面: 「行け行け」の時代にどれだけ債務を増やしてしまったか?
個人・政府・企業でどれだけ増えたか。
コベナントの緩いローンはすでに史上最高水準にある。
流動性が今より減少する将来、金利上昇に債務者は耐えられるのか。

金融緩和正常化はゆっくり着実に進める必要がある。
正常化は資産価格に大きな影響を及ぼし、ショックさえ生みかねないからだ。

ラジャン教授は、こうした懸念があるからこそ、中央銀行は市場が順応する時間を確保できるよう周到なフォワード・ガイダンスを尽くすべきだと言う。
高まってしまったレバレッジには債務の拡大そのもののほか、さまざまなポジションによるレバレッジの高まりもあるとし、両方が徐々に手じまえるようゆっくりと金融緩和を巻き戻すべきと語った。
金融緩和を継続すべきとの意見については、経済のたるみが解消しつつあること、金融セクターのリスクが高まりかねないことを理由に適切でないとした。


先進国での金融引き締めが1997-98年のアジア危機のような混乱を生み出さないかとの問いには、新興国側の状況が改善していると話す。
影響を受けずにすむわけはないが、この4-5年だけを見ても新興国経済は頑強さを増していると言う。

共和党の減税については、重要な観点が欠けていると批判する。

「本当に必要なのは、人々が必要とし今は得られていない職に経済成長の再分配を向かわせることだ。
現在得られている職は彼らのスキルに合っていないんだ。」

確かに失業率は極めて低位にあるものの、労働者がその職に満足しているかは失業率の数字には表れない。
格差が拡大してしまった米社会が必要としているのはそうした問題に対処するような再分配だ。
しかし、共和党の減税案にはそうした思想はなく、さらに格差を拡大させかねない。
というのも、税制改革の要素を別とすれば、財源も足らず減税となる政策が、完全雇用に近いタイミングで行われることに疑問を禁じ得ないからだ。

「自問すべきなのは、現状の失業率の下さらに成長が強まった場合に労働市場に伸びしろがあるかということだ。
もしも雇用が増えないなら、そこで起こるのは、財政政策による経済刺激とFRBの金融引き締め加速による打ち消しになってしまう。」

減税が米経済をさほど拡大させないだろうということはコンセンサスのようだ。
需給ギャップがほとんどない中で財政による刺激策を講じても、生まれる需要のほとんどは輸入増で吸収されるだけだからだ。
需給が引き締まれば、FRBは今とばかりに金融政策を正常化しておこうとするだろう。
次の景気後退でやれることを増やしておきたいからだ。
金融政策の正常化のための(財源なき)財政政策については、意見が分かれるところかもしれない。


 - 海外経済, 政治 ,