モダン・マネタリー・ナンセンス:ケネス・ロゴフ

国家は破綻する』の著書で世界各国の財政政策に大きな影響を与えたハーバード大学 ケネス・ロゴフ教授が、モダン・マネタリー・セオリー(MMT)について論じている。
あわせて、米財政問題への処方箋を解説している。


米国は債務を米ドル建てで発行できて幸運だが、印刷機は万能薬ではない。
投資家が国債を保有したがらなくなったら、その通貨についても所有しようとは思わないだろう。
その国が通貨を投げ売りすれば、その結果はインフレだ。
仮に中央計画経済(MMT支持者にはこれを目標にする人もいるようだ)に移行したとしても、この問題は解決できない。

ロゴフ教授がProject Syndicateで、MMTの致命的な問題点を指摘している。
MMTによれば、自国通貨建ての債務で財政赤字を補う国はいくら債務が拡大しても心配ないという。
教授はこれを「単なるばかげたこと」と切って捨てる。

ジェローム・パウエルFRB議長は今月の議会証言で同様に否定的な見解を示している。
多くの識者がMMTに対して厳しい批判を浴びせている。
それでも米政界ではMMTを支持する声が絶えない。
あたかも2012年の日本のようだ。

ロゴフ教授がこの議論に加わったのには理由がある。
MMTがばかげていることの他に、この議論が財政問題をテーマとしていながら中央銀行を巻き込む点にある。
彼らが提唱しているスキームは、政府が国債を発行し中央銀行が買うというもの。
そうすれば、無制限に政府がお金を使えるというものだ。
これを実現するためには中央銀行に国債を買わせなければいけない。
つまりは財政従属であり、中央銀行の独立性が損なわれるのだ。
中央銀行が独立性を失った時、しばしば悲惨なことが起こるのは歴史が示すところだ。


かつてIMFチーフ・エコノミストを務めたロゴフ教授は、米財政問題への対処法をいくつか吟味している。

  • 債務の長期化: これが正しいという。
    利払い負担をコントロールしやすい。
    金利が急騰してしまったら、短期債より長期債の方が大幅に減価する。
  • 金融抑圧の再開
    「これは、外国の買い手に大きく依存する米国より、ほとんどの債務が国内で保有されている日本にとっていい選択肢だ。」
    米国とはなんとよこしまな国だろう。
    自分たちは安いコストで借りておいて、最後にドカンと外国人に損をさせようとしている。
    一方、日本人は金利を下げても逃げないと足元を見られているのだ。
  • FRBが長期国債を買い短期債務を発行: 180度まちがい。
    ちなみに、自国通貨も「短期債務」の一種だろう。
    (その短期債務が受け入れられる間はあたかも長期化したかのように見えるが、信認が損なわれると同時にすべてが短期化、つまり即座に拒絶されることになる。)
    統合政府ベースでの債務の短期化は、統合政府の資金繰りを危うくする。

ロゴフ教授は、今回のMMTのような議論を招いた原因はFRBにもあるという。
リーマン危機後の量的緩和政策が、FRBのバランスシートを使う政策に道を開いてしまったからだ。
教授の同政策への評価は高くない。

QEが、単純に国債を買うことなら、それは手品のトリックにすぎない。
FRBの親会社である米財務省は、それと同じことを、1週間もの債務を発行することで実現できた。
そこにFRBが介在する必要はなかったんだ。


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