マーヴィン・キング:何一つ変わっていない

マーヴィン・キング前イングランド銀行総裁が、金融危機再発の危機感を語った。
リーマン危機後の世界の金融市場の混乱に立ち向かった立役者の一人は、問題の根源が何一つ解消していないことにいら立っている。


奥にある危機の源泉は何一つ変わっていない。
一つは金融セクターの膨張だ。
政府などの公的部門、企業など民間部門とも、負債総額はリーマン・ショック前の水準よりもはるかに大きく膨らんでいる。

キング氏が日本経済新聞のインタビューで金融危機の再発を心配している。
膨張しすぎた債務がリーマン危機を招いたのは誰の目にも明らかなのに、その後も債務は膨張を続けている。
それと同時に、債務によって得られたマネーが資産価格を押し上げる。

「米国や英国では、居住用不動産や商業用不動産への過剰投資が続いている。
・・・明らかに持続不可能な状態だといえる。」

キング氏は定義の曖昧なバブルという言葉を使わず「持続不可能」とだけ指摘した。
いい加減にバブルという言葉を定義し、今はバブルだとかバブルじゃないとか議論しても無意味だ。
一番重要なのは、現状の高い資産価格が今後も持続可能なのかどうか。
ある定義からしてバブルではなくても、持続可能でないならやはりリスクなのだ。

「実質長期金利は現在ゼロ%に近い。
これが歴史的な平準値の3~4%に戻っていけば、資産価格は調整が避けられない。
巨額の負債を抱えたまま資産価格の下落に見舞われれば、債務不履行(デフォルト)のリスクが高まる。
今後5~10年でみた世界経済のリスクはこの過大債務問題だ。」


実質金利にして3-4%の上昇など遠い未来の話のように聞こえる。
だからと言って安心してはいけない。
日本の場合、政府債務の大きさからして2%も実質金利が上昇すれば、国家財政が大打撃を受ける。
3-4%とは国家破綻の領域かもしれない。
金利上昇によるデフォルト・リスクは、債務の大きな日本にとってははるかに身近なリスクである。

日本の場合、こうした不均衡は政府と民間の間のものだ。
幸い、全体で見れば日本は対外債権国であり、だからこそ巨額の政府債務でも国家が破綻せずに済んでいるのだろう。

視野を広げて見れば、もっと重大な不均衡が世界には存在する。
日本のような経常黒字国と米国のような経常赤字国の間の不均衡だ。
経常黒字国での過剰貯蓄は、経常赤字国への投資に向かわざるを得ない。
それが米国内での資産価格を持続不可能な水準まで押し上げてしまう。
2000年のITバブルしかり、2007年の不動産バブルしかりである。
こうしたデジャブは、経常黒字国・経常赤字国の不均衡が温存される間続いてしまう。

「世界経済の不均衡を解消するには、金利政策や通貨政策は国際協調のもとで取り組む必要がある。」

経常黒字国の輸出依存、経常赤字国の過剰消費にメスを入れない限り、同じ構図が繰り返されることになる。
キング氏の発言は、各国の金融政策が国内政策ではないことを認めるものだ。
今や金融政策は金融調整というよりも、為替介入のために行われるようになった。


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