マーティン・フェルドスタイン:経済の安全は国防

民主党・共和党両政権で要職を務めたMartin Feldsteinハーバード大学教授は、今月ホワイトハウスが発表した『National Security Strategy』(国防大綱,NSS)についてコメントした。
総じてロシア・中国を仮想敵国とした内容だったが、フェルドスタイン教授はある変化を高く評価している。


2017年のNSSが異なるのは、経済の役割を強調している点だ:
『経済の安全は国家の安全だ』と新しいNSSは断言している。

フェルドスタイン教授はProject Syndicateへの寄稿で、国防分野でも経済学にスポットライトが当たった点を経済学者として素直に喜んでいる。
教授は、トランプ政権の規制緩和・税制改革による成長戦略を高く評価している。
そして、いかにもタカ派的な議論を展開する。

「経済成長は軍事力増強のための資源をもたらす。
しかし、経済成長がより効果的な国防をもたらすには、最も拡大を必要としている分野を対象として議会が将来の軍事費増強を承認しなければならない。」

限定的というニュアンスを含めながら、軍拡が必要と主張しているわけだ。
では、そのお財布を米国はどこから捻出すればいいのか。
ここで、フェルドスタイン教授は経済学者らしさを見せる。

「NSSでは、中国ほかの国による様々な貿易障壁以外の不公正な政策についても批判している。
しかし、アメリカ人の利益を損なうものと、『不公正』によってアメリカ人の利益を実質的に助けるものの区別をつけていない。」


フェルドスタイン教授は、ダインピングが後者の例だという。
例えば、外国企業がダンピングによって米市場から米競合企業を追い出すことがあるのは事実だろう。
しかし、米企業退出後に外国企業が値を吊り上げるような事象は現実には見られないのだと言う。
仮にそうであるとすれば、ダンピングは米競合企業にとっては災難だが、消費者にとっては朗報ということになる。
教授は、こうした例を一概に否定すべきでないと考えている。
では。教授にとっての絶対悪とはなんだろう。

「今後、米政府は外国政府の貿易政策に対し、以下に集中して格闘する必要がある:
技術の盗用、米輸出への非関税障壁、強制的な技術移転
これらは、米消費者に何の恩恵ももたらすことなく米企業を害する。」

日本人からすれば2点に気づくのではないか。

米国は消費者を重んじる社会を受け入れている
ともすれば輸出企業を害する、あるいはデフレ的な圧力を増すようなダンピングについても、ダーク・サイドだけでなくブライト・サイドを見ている。
こうした発想を持つなら《自国通貨高は国益》とする考え方も成り立ちうる。
一方、輸出産業拡大による経済拡大しか見込めないとの前提に立つ政策では、家計を害しても輸出産業を利するべきとの色彩が強くなってしまう。

米国が国防と経済・通商を一体視し始めた
これは日本にとっては大きな脅威だ。
防衛と通商を一体とした交渉を仕掛けられてしまえば、日本は(少なくとも短期的には)通商面での隷属を強いられかねない。


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