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マーケティングは大学一卑しい分野:ロバート・シラー
2019年11月20日

ロバート・シラー教授が、マーケティングをディスることから始めて、純粋資本主義の問題点を指摘している。


「1つ考えてみたいのは、あまり交流はないのだけど存在する、ビジネス・スクールのマーケティング講座だ。
彼らは大学全体の中で、最も名声の低い講座だろう。
なぜなら、彼らは人々にタバコをを吸わせたり他のことをさせるために、魂を売っているからだ。」

シラー教授があるNPOでのインタビューで、極めて率直な「印象」を述べている。
私企業の利益のためなら魂を売るのもいとわない人がいる、マーケティングという営みに対し、半ば率直に軽蔑の気持ちを述べたのだ。
気さくな人柄だからこそ口にできる悪口である。

こうした「印象」はタバコ広告に限らず、多くの場面で多くの人たちが共有するようになっている。
巨額プロジェクトや政治の裏で広告代理店やSNSが凡人のモラルを超えた行動をとっているとの疑惑が絶えない。

シラー教授は、たとえトランプ大統領をこき下ろしていても、大統領のもつ経済効果はフェアに評価する。
教授のすごいところは、大学一名声の低い組織と協働する可能性を考えているところだ。
シラー教授は、マーケティングが秘める可能性と問題点を指摘する。

マーケティング関連の雑誌を読むと、彼らはナラティブを学んでいるように見える。
でも、彼らの態度は、私企業のために広告を用いることを若者に訓練している。
すべてを読んだわけではないが、少しはあるのかもしれないが、そこにナラティブの立場から民主主義や資本主義への大きな疑問を考えている姿は見えない。

シラー教授は、大学やビジネス・スクールの部門間でもっと協調があるべきと述べている。
教授は、協働できる可能性は他にもあるという。

「奇妙なのは、誰か、経済学の教授と新聞のコラムニストまたは新聞記者が共同で本や記事を書いたのを見たことがある?
私は一度もない。
なんで分断しているんだろう?
実り深い研究のパートナーになりそうじゃないか。」

こちらの指摘については、むしろ非はお高くとまった経済学の方に向けられているのかもしれない。

シラー教授の話は「魂」や社会のあるべき姿に焦点を移した。
それは、資本主義の是非だ。

今人々の考えに新たな認識が芽生えつつある。
それは、資本主義が常に良い所得分配を実現するものではないというものだ。

教授によれば、デヴィッド・リカード『経済学および課税の原理』第3版の前までは、資本主義が良い分配をもたらすと考えられていたのだという。
ところが、リカードは1830年代に出版した第3版で機械化についての章を加筆し、こう主張したのだという。

「『何年か前の機械破壊運動の前までは、私は盲目的に、自由市場がすべての人に恩恵を与えると仮定していた。
しかし、今では自分が間違っていたと認める。』」

リカードが資本主義の問題点を認めざるをえなくなるほど、当時の機械化は格差問題を深刻化させたのだ。
シラー教授は、今同じことが起こっていると考えている。
経済の構造が変化し、一部の人が経済力を集中できるようになったと心配している。

シラー教授はかねてから、ナラティブの中に対をなすもの反復して現れるものがあると指摘してきた。
機械が人を不幸にするというナラティブのその1つだ。
そしてもう1つ、人が不幸になるのにともない何度となく現れる議論を紹介した。
それは、ユニバーサル・ベーシック・インカムの概念だ。
古くは1795年、トーマス・ペインによる『Agrarian Justice』だ。

「彼は、機械が雇用を置き換えることを心配したわけではない。
地主、土地を保有する階級が独占することを心配した。
・・・国がその方向に向かっていると。
そこで、ユニバーサル・ベーシック・インカムとは呼ばなかったが、それを提唱している。
これはまた1879年、ヘンリー・ジョージの『進歩と貧困』でも現れる。」

それにしてもシラー教授の引き出しの大きさには驚かされる。
用意した講演ではなく、対談や質疑の中での説明でも、年代まで添えて関連情報を紹介する。
もちろんすべてが完全に正確とは思えないが、仮にそうでも驚異的だ。
ペタバイト・レベルの情報アーカイブから瞬時に関連レコードを引き出し、適切なフォーマットで回答するスーパー・コンピューターのようなものだ。
行動経済学における実証研究でノーベル経済学賞を獲るには、こういう記憶力と頭脳が要求されるのだろう。

シラー教授は、以前から学問や経済学の社会的意義について言及している。
経済学の目的はGDPの数字・生産性の数字ではなく、人生の意味の数字だと説いたこともある。
物質的な生活だけでなく心を幸福にすることが経済学の目的でなければいけないと考えている。
そういう教授からすれば、現在の社会の問題点のいくつかはかなり自明のことなのだろう。

私たちは転換点にいる。
少なくとも、私たち、人々は言い始めた。
資本主義、純粋で手付かずの資本主義とは異なることをしない限り、格差は悪化していくと。


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