新興国市場投資の大ベテラン マーク・モビアス氏が、次の強気相場開始までにはかなり時間がかかると予想しつつ、株式偏重の分散ポートフォリオを推奨している。
(強気相場開始を)予想するのはまだ少し早いと思う。
世界中の多くの国でロックダウンが行われているが、このロックダウンが企業に及ぼす影響はすぐには見えない。
大底を打ったのか、近いのか、とYahoo Financeから尋ねられ、モビアス氏がまだと答えた。
米市場の能天気ぶりは大昔からだ。
感染がピークを迎えつつあるように見えただけで、反騰をもくろみ買いが入る。
しかし、モビアス氏はもう少し慎重だ。
モビアス氏は、経済回復までにもう少し時間がかかると話し、この日2つの理由を挙げている。
1つ目は、ジョン・テンプルトンの明言を引き、「今回は違う」とはならないと話した。
モビアス氏が世界11市場の過去の弱気相場を調べたところ、下げ幅は21-70%で平均は約50%だったという。
底を打つまでの期間は1.7年。
下げ幅でも期間でも、まだ浅い弱気相場であることがわかる。
もう1つの理由は、失業保険新規申請者数が数百万件に急増している点だ。
モビアス氏は、これが意味することを解説する。
「彼らが同じ元の職場には戻らないということを意味している。
企業の視点で言えば、多くの企業が、政府の補助金・支援にかかわらず、労働者を解雇するチャンスを行使している。
だから、そういう企業が元に戻るのは難しく、時間もかかる。」
悲しい現実だが、危機とは企業にとって余剰人員や不採算部門を整理する絶好の機会なのだ。
整理解雇の数が大きくなるとは、対象が余剰や不採算のものを超えて広がっている可能性を意味する。
この縮小を取り戻すのは容易ではない。
モビアス氏は、今後経済統計が出てくるにつれ、期待外れな結果も増えるはずと予想する。
結果、二番底をつけにいき、強気相場の開始はその後になると見ている。
同氏は、経済政策が市場に有利である点を付言し、自身の方針を語る。
よし、信じられないほどの下げがあった。
20-30%も下げて、たくさんの株がかなり魅力的に見える。
いくらかお金を、現金の30%を投資してどうなるか見てみよう。
そして、市場がさらに下げれば投資を続けよう。
こうした投資スタンスは、多くの著名投資家が推奨しているものだ。
市場がまだ調整(20%以内の下落)の範疇だった時、下げがまだ小さいから押し目買いも少なめと奨められた。
市場が弱気相場(20%超の下落)になると、まだ大きく下げるかもしれないから余力を残すよう奨められている。
モビアス氏は、通常の投資家には分散を奨める。
また、自身の専門である新興国市場が「本当に安く見える」という。
同氏は、投資家に株式偏重のポートフォリオを奨めている。
まず、少なくとも10%を金、現物の金に投資しろ。
そして残りを株式に。
フィクスト・インカムには投資すべきでない。
こうした環境では株式に投資すべきであり、株式の中の30-40%を新興国市場に投資すべきだろう。
インフレと金融抑圧への防御ともいえる構成だ。
そこそこのインフレ上昇と低金利の維持は、金価格上昇を連想させる。
インフレと低金利継続はフィクスト・インカムが価値を失う状況を連想させる。
インフレが高まりすぎないなら株式は有利だし、金融抑圧が起こりにくい新興国市場は魅力的かもしれない。
モビアス氏は、新興国市場から有望市場をいくつか挙げている。
- 中国: コロナ・ショックかた他国よりうまく脱した。
- インド
- ブラジル: 下げ幅が大きく、株価が割安に見える。
- 南アフリカ: ムーディーズはジャンクに格下げしたが、優れた企業が多い。
- トルコ: 完全なロックダウンを行っていない。
- インドネシア、メキシコ
モビアス氏は、経済回復を早める手段として、ルーズベルト大統領のニューディール政策で行われたインフラ整備を挙げた。
政府が人々を仕事に就けるやり方として見習うべきとても良い政策だという。
アメリカ人にはある癖がある。
貧困に苦しんでいても、政府にお金を乞うことを好まない傾向がある。
彼らはしばしば《お金が欲しいのではない》と言い切る。
そうではなく《仕事が欲しいんだ》という。
本音はどうあれ、立派な主張だと思う。
もちろん今困っている人たちにお金を届けることは重要だ。
しかし、もっと素晴らしい支援もないのか、模索してみてもよい。