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マイナス金利のためのCBDCは考えていない:日銀
2022年4月15日

日本銀行理事の内田眞一氏が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する協議会での挨拶で、CBDCへの付利についてコメントしている。


日銀主催の同協議会はフェーズ1(2回開催)で技術的実現可能性の検証のための概念実証を行い、今月からはフェーズ2が始まった。
フェーズ2では「フェーズ1で確認したCBDCの基本機能に、より複雑な周辺機能を付け加え、その実現可能性や課題を検証して」いくという。

内田氏の挨拶は総じて合理的かつバランスのとれた内容だ。
ただ1点だけ、日銀の強い意志を感じさせる部分があったので、日銀ウェブサイトから紹介しよう。

また、CBDCに対する付利機能についても検証していく予定です。
現金代替という基本的な役回りや預金との競合を回避することなどを考えると、付利機能を導入する必要性は高くなさそうですが、それでも、制度設計に関する将来の議論に備えて、「できるかどうか」を技術的に確認しておくことは必要です。
なお、学界等でマイナス金利実現の観点からCBDCの付利機能を使うというアイデアが語られることがありますが、こうした観点でCBDCを導入することはありません。
そうした「動機」に、国民的合意が得られるとは考えられませんし、実務的にも、現金が並存することを考えると現実性がありません。

興味深いのは、ここで2つの予断が示されている点だ。

  • 付利の必要性は高くない。
  • マイナス金利のためにOBDCを導入することはない。

金融緩和がゼロ金利制約に突き当たり、それでも人々が金融緩和を捨てきれないと、いくつかのアイデアが出された。
1つが量的緩和だった。
しかし、先進各国の社会実験的な政策により、マネタリーベースを増やすだけでは、期待するほどの効果が得られないことがわかった。
量的緩和が有効となるのは、財政政策の協調、つまり事実上のヘリコプター・マネーが必要であるとの意見が大勢だ。
しかし、もちろんできることなら協調的金融・財政政策はやりたくない。

もう1つのアイデアがマイナス金利政策だ。
しかし、マイナス金利政策には限度がある。
政策金利をマイナスにし、下げていけば、みんなタンス預金で対応しようとする。
現金の存在が、この政策の実現を邪魔する。

マイナス金利政策については今のところ評判がひどく悪い。
採用した欧州・日本の結果が芳しくなかったためだ。
ただし、これには不幸な巡りあわせもあった。
先に強烈な量的緩和が行われ、その後にマイナス金利が実施されたため、マイナス金利の副作用が強く感じられた面もあったのだろう。
仮に、マイナス金利を先行させれば、イールドカーブの短期側を押し下げ順イールドに保つという点で有利な面もあるのかもしれない。

元IMFチーフ・エコノミストのケネス・ロゴフ ハーバード大学教授は、通貨のデジタル化を提唱している。
管理されたデジタル通貨を普及させることで不正を排し、高額紙幣を廃止することでマイナス金利政策を可能にする道を用意すべきとの主張だ。
金額規模でいえば高額紙幣を廃止しCBDCを導入すれば、世の中の現金等価物の(金額規模での)大半をデジタル化できる。
デジタル化した現金等価物にマイナス金利を付すことが可能になる。
そうすれば、中央銀行のバランスシート拡大という厄介な問題を回避して金融緩和できる。
ロゴフ教授は、長い時間をかけてインフラを作っておくべきとの考えだ。

内田氏の挨拶は、そうした可能性を真っ向から否定する内容になっている。
もちろんこうしたテーマを日銀から言い出すのは難しい。
ただでさえ最近は金融緩和への風当たりが強い。
金融緩和とはお金を安くする営みであり、善意である場合でも現預金保有者を痛めつけて実現する政策だ。

それでいて将来さらに追加緩和が求められる可能性も否定できない。
今は違ってもいつか「国民的合意」が得られるかもしれない。


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