海外経済

マイナス金利が為替・市場を混乱させる:ジェフリー・ガンドラック
2019年12月6日

新債券王ことダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏のYahoo Financeによるインタビュー第2弾:金融政策の真相と帰結。


「今日驚くべき発言がラエル・ブレイナードFRB理事から飛び出した。
『FRBがインフレを押し上げるために介入したい背景の理由は極めて複雑で、公衆に説明するには複雑すぎる』というんだ。
私が考えるに、そこに何も根拠がないというようなものだ。」

ガンドラック氏がYahoo Financeで、中央銀行の詭弁を批判した。

FRB高官でさえ、なぜ中央銀行が物価上昇を望むのか明解に説明することができない。
インフレを上昇させれば実質金利を下げられるからというのは一応の理屈かもしれない。
しかし、それは金融政策のために金融政策をやっているような響きがある。
実際にそれが十分に機能しない場合、危険な循環を引き起こしかねないのではないか。

ガンドラック氏の解釈はもっと割り切っている。
中央銀行が嘘をついているというものだ。

背景にあるのは、国家債務が危険な速度で累積しており、世界の中央銀行は金利よりインフレ率が高くなることを望んで暗黙の政策を実行している、ということをFRBが理解しているという意味だろう。
私はそう理解した。

つまり、財政従属の中で金融緩和が選択されているという見方だ。
政府や中央銀行が、インフレによって国家債務の実質的価値を減価させようとしているとの解釈だ。
仮に当初の考えがそうでなかったとしても、今や多くの国で、金融緩和の助けなくして財政を維持できない状態にあるのは事実だろう。

ガンドラック氏は、中央銀行が真の意図を隠していると考えている。
そして、その嘘がまた新たな詭弁を生み出しているという。
それは、物価水準目標などの考えに見られる、過去の2%未達分を取り戻すまで金融緩和をやめるべきでないとする考え方だ。

「FRBは、過去インフレが2%を割った部分まで取り戻さなければいけないようなことを言っている。
どんな意味かさえ理解できない。
過去10年物価目標が2%で実績が1.5%だったからといって、誰も気にしない。
それが何なんだ。
恐れていたデフレではなく、まだインフレだったんだ。・・・
どんな経済理論が『将来のインフレは任意の平均を達成するように過去のインフレ(の未達分)を取り戻さなければいけない』というんだ。・・・
そんなのは、金利をインフレより低くするのを目標にしたいという本当の理由のための理解不能なお役所言葉だろう。」

このガンドラック氏の指摘は正しい。
ハト派の人の中には、趨勢的停滞等を理由に金融緩和の継続を求める人がいる。
ただそういえばいいものを、物価水準目標など、確たる根拠もない摩訶不思議な算式を持ち出して、この算式にしたがうべきだという。
しかし、例えば物価水準目標の算式にそれなりに納得できる証拠があるわけではない。
ただ、金融緩和を続けたいために作られた考えだからだ。
それならば最初から、趨勢的停滞だから継続すべきと論じるべきなのだ。

ガンドラック氏は、マイナス金利政策についても採用すべきでないと切って捨てる。

「マイナス金利によって経済を刺激しようとしている。
この政策の裏で銀行や保険会社がとても苦しんでいる。
・・・長い目で見ると相当に致命的だ。」

ガンドラック氏は、マイナス金利について、量的緩和政策の欺瞞を感じさせるような現状を指摘する。
世界のマイナス利回りの債務の97%が、中央銀行と、規制により保有せざるをえない金融機関により保有されているという。
つまり、債務をマイナス利回りにしても、民間セクターでは、ほとんど保有していないというのだ。
ガンドラック氏は、数年前GPIFを訪問した時の会話を紹介した。

「私は尋ねたんだ。
『お会いできてとても光栄です。私は死ぬほどお尋ねしたかったのですが・・・あなたの年金基金ではマイナス利回りの債券を保有していますか?』
彼らは笑って答えた。
『もちろん保有していません。日銀が保有しているだけです。』
奇妙なファイナンス・スキームが出来上がっている。」

統合政府の右手から左手に国債が回るだけ。
たとえ、マイナス金利の国債であっても、右手と左手の間を行き来するだけだ。
ここに大きな景気刺激効果を期待する方が無理があるのだろう。

ガンドラック氏は、大きな経済の中でマイナス金利がもっとも深い国ドイツの大手銀行、ドイツ銀行を例に「基本的に、マイナス金利は長期で見ると銀行システムにとって致命的」であると主張した。
だから、米国はマイナス金利を採用すべきでないとし、同様の意向を示したジェローム・パウエルFRB議長について、この点で称賛した。
ガンドラック氏はインタビュー中、パウエル議長の成績を尋ねられ「C-」としていた。
「D」としなかったのは、パウエル議長がマイナス金利に対し否定的な意見を述べているためだという。

ガンドラック氏は、次の景気後退期、ゼロ金利もQE再開も行われるだろうという。
それでも、マイナス金利だけは選択肢すべきでないという。
それは、米経済を超えて、世界に禍をもたらしかねないからだ。

米国がマイナス金利、日本がマイナス金利、欧州がマイナス金利になると、世界の銀行システムにとって致命的だ。
資本が向かう先がなくなってしまう。

ガンドラック氏は、現在、米市場が日欧のマネーを吸収する役割を担っており、これが安定的なドル高を実現しているという。
米市場がマイナス金利になると、世界のマネーは行き場を失い、ドル相場の安定さえも揺らぐと考えているのだ。


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