マイナス利回りがシステムを破壊する:モハメド・エラリアン

Allianz首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、イールド・カーブ、金融政策、マイナス金利、投資戦略について語っている。
とりわけ、米国債利回りがマイナスになる可能性について広範な懸念を語っている。


「ある程度これ(イールド・カーブ長短逆転)が経済面で自己実現的期待を生みうる点に注意すべきだ。
これが伝統的に景気後退のシグナルであり、だから景気後退がやってくる、だから消費者の支出が減る、企業の支出が減る、結果、景気が鈍化する。
私は今回は伝統的なシグナルと扱うべきでないと思う。」

エラリアン氏がYahoo Financeで、イールド・カーブの長短逆転の指標性を過信すべきでないと話した。
14日の米市場では、2年債と10年債の利回りが2007年以来の逆転となった。
イールド・カーブの長短逆転は景気後退前に見られ、ある程度継続する場合かなり確度の高い先行指標とされる。
エラリアン氏は、現状のイールド・カーブが2つの要因で歪められているとし、従来とは状況が異なると主張する。
同氏が挙げた2つの要因とは:

  • 欧州のマイナス金利: 欧州の長期債が米長期債利回りを押し下げる。
  • 市場とFRBの不健全な共存状態

エラリアン氏は、市場とFRBの関係が好ましくない状態にあると指摘する。
以前、市場は「FRBは経済にはたいしたことはできないが、資産価格を押し上げることはできる」と考えていた。
それが「他で起こっていることを見ると、FRBは資産価格も押し上げられないかもしれない」に変わった。
さらには、「FRBの利下げが誤ったシグナルを送っている」との批判を浴びている。

FRBは今や9月に25 bpではなく9月に 50 bpの利下げを強いられる状況だ。

エラリアン氏はFRBがますます追い込まれていると話す。
進むも地獄、退くも地獄だからだ。

  • FRBは市場に抵抗しすぎてはいけない。さもないと市場が経済に悪影響を及ぼす。
  • FRBが金融緩和しても経済へのインパクトはわずかで、金融市場に問題を与える。

米国は個人消費に大きく依存する経済であるため、資産効果の効きが大きい。
だから、将来に禍根を残しても、足元の資産価格を支えようとしてしまうのだろう。
ある意味愚かに見えるこうした思考回路は、エラリアン氏の解説にも表れている。


「問題なのは、FRBが動かなかった場合に市場に起こることだ。
昨年の第4四半期の恐怖がそれだ。
突然、尻尾のはずの市場が犬本体であるはずの経済を振り回す。
彼らが恐れているのは、金融の混乱が経済の信頼感を損ねることだ。」

エラリアン氏は、追い詰められているのがFRBだけではないという。
各国の中央銀行も追い詰めれれているといい、その理由は中央銀行の失態ではないと話す。
政策ミックスの中で、金融政策ばかりがあまりにも長く負担を背負わされたにすぎないのだという。

FRBが追い詰められ、援軍が来ないなら、結局は金融緩和をするしかない。
景気が鈍化し、金融緩和、場合によっては量的緩和も行われるなら、米国債利回りがさらに下がる可能性も否定しきれない。

エラリアン氏は、米国が日欧のようにマイナス利回りになるのを深く心配している。
世界最大の金融市場である米市場がマイナス利回りとなれば、多くのメカニズムが破壊されかねないという。

(社会の)システムはマイナス利回りの中で機能するようには作られていない。
マイナス利回りは、長期の金融保険商品の提供を不可能にする。
マイナス利回りでは、よい生命保険、よい年金制度を提供することはできなくなる。
これが消費者、家計をさらにリスク回避的にする。
マイナス利回りは銀行システムを破壊し始める。
マイナス利回りは、経済の機能の仕方に大きな影響を及ぼす。

エラリアン氏は、FRBは急激な利下げを行うべきでないと主張する。
利下げを急ぎすぎれば、米国債利回りもマイナスになりうるというのだ。
同氏によれば、ECBがその過ちを犯し、今もマイナス利回りから脱出できないでいるという。

エラリアン氏は、投資戦略を尋ねられると、3つのポイントを挙げている。

  • 主に混乱にともないチャンスはやってくるが、機敏に立ち回る必要がある。
  • 米国へのエクスポージャーを減らすな。特に対欧州で。
  • 私募のクレジット市場のよい商品があれば検討の価値がある。公開市場・幅広い指数だけに投資しているならリスクを下げるべき。

エラリアン氏は、リスクについて尋ねられると、良い点・悪い点を話した。
良い点は、前回の危機前より決済システムが頑強になり、銀行に集中していたリスクが分散されていること。
悪い点は、流動性リスクについて過小評価されている点だ。

中央銀行から長年にわたり十分に予見できる流動性が供給されたため、システムがエンド・ユーザーに対し過剰な流動性を約束している。
結果、流動性の高い商品の中に流動性のないポケットが多く存在する。
私が一番恐れるのはこのミスマッチだ。
・・・
例えば、市場の流動性のないセグメントを裏付けとするETFだ。


 - 海外経済, 投資 , ,