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ボルカー・モーメントはまだまだ先の話:ブリッジウォーター
2021年10月19日

ブリッジウォーター・アソシエイツのボブ・プリンス氏が、淡々と冷静にインフレと金融政策、それに応じた投資について語っている。


(需給を)均衡に戻すのは金融政策の引き締めだ。
FRBには利上げの余地はもはやないが、利上げの余地はたっぷりある。
その日が近づきつつあり、問題は利上げの大きさと時期だが、市場の織り込みより早くなるだろう。
おそらく、はるかに大きくなるだろう。

プリンス氏がBloombergで、米経済に生じた不均衡を解消するための金融政策を予想した。
過去の例では、利上げが(インフレ抑制のために)経済を鈍化させるまでに3-4%の引き上げが必要だったとし、今回はそれより大きな利上げサイクルになると予想した。
過去よりはるかに莫大な「見かけの富」(金融緩和で生み出された金融資産)が存在し、それが支出に向かう可能性があるためだ。

プリンス氏は、現状の経済状況を踏まえた投資家の対応策を尋ねられている。

  • インフレ・ヘッジとなる資産
    FRBはインフレや経済に遅れて行動すると予想され、インフレ封じが後手に回ると予想。
    「金利の最初の上昇はインフレ上昇によるものだろう。
    金利が経済によって引き上げられるが、それでは鎮静化せず、すべての水準のリセットのようなものになる。」
  • 東洋と西洋でポートフォリオをバランス
    東洋・西洋間のキャッシュフローの比に対し、投資は西洋に大きく偏っている。
    「私たちは西洋中心の投資の考え方を持ちがちだ。」
    バランスを取るという考えを実践できている人はいないとし、もしもトレンドになるなら、東洋が大きく買われると暗示。

最後にプリンス氏は、米経済が「ボルカー・モーメントに近づいているのか」と尋ねられている。
米経済は特に1970年代に過酷なインフレに見舞われた。
そこでインフレ退治に奔走したのが1979年にFRB議長に任命されたポール・ボルカーだ。
プリンス氏は質問にまずこう答えている。

「いいや。
だって、ボルカー・モーメントを迎えるにはポール・ボルカーが必要だろう。」

ボルカー氏は2019年亡くなっている。
ボルカー・ショックの他にも、リーマン危機後の金融規制、いわゆるボルカー・ルールなどでも有名だ。
《ショック》にしても《ルール》にしても、とにかく敵や反対を多く作る営みだ。
政策についての賛否はあろうが、どんなに厳しい批判を浴びてもひるまない人物として、尊敬を集めている。
ボルカー・ショックでは、FF金利を実に20%にまで引き上げている。
当時のインフレ退治にはこれほどの(名目ベースの)引き締めが必要だったのだ。

プリンス氏はボルカー氏を「稀有で偉大な人物」と称している。
ボルカー氏と同じことをできる人物はそうそういないと考えているのだ。
そして、機も十分に満ちていないのだろう。

(ボルカー・ショックに至るには)20年間のインフレの蓄積があった。
ドルに深刻な圧力が加わり、準備通貨としてのドルに深刻な疑念が生じ、そこでボルカーが潮目を変えるために乗り出した。
まだ潜在的問題が始まったばかりで、そこに至るには数人FRB議長が変わるだろう。

ブリッジウォーターでプリンス氏やレイ・ダリオ氏とともに共同CIOを務めるグレッグ・ジェンセン氏は最近、財政・金融政策がどんどん拡張的になっていくのは運命と称している。
プリンス氏の「始まったばかり」という発言も、この運命論と符合するのだろう。
FRB議長が数回変わるなら、今はまだニフティフィフティ前であるのかもしれない。
プリンス氏は、(山あり谷ありだろうが)問題がまだ悪化の方向を辿るから、その先を見据えて投資しなさいと言っているように聞こえる。

もちろん、投資家はいつでもポジション・トークに注意しないといけない。
彼らの言をポジション・トークと見るか否かは、読者の判断にお任せしよう。
ただ1つ言えるのは、ポジション・トークをするにしては、対象の資産クラスの市場規模があまりにも大きいように思える点だ。


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