ベン・バーナンキ:中央銀行に残された手段

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ベン・バーナンキ前FRB議長が「一時的な物価水準目標」の採用を提言している。
利下げ余地のない中で不況がやってくれば、FRBには新たな金融政策手段が必要になるというもの。


「低い名目金利、低いインフレ、低い経済成長率が中央銀行の難題となっている。
特に、長期的な実質均衡金利の推定値がかなり低い中で、FRBの短期金利引き下げ余地がほとんどない時に、次の景気後退が起こるかもしれない。」

バーナンキ氏が自身のブログで、金融緩和の余地を模索している。
FRBは今回の金融引き締めサイクルでこれまで計4回の利上げを行ったが、利上げ幅は合計でわずか1%にすぎない。
バランスシート縮小についてはまだ緒についたばかり。
今のまま景気後退がやってくれば、FRBに残された金融緩和の余地は小さい。
バーナンキ氏は4月にも同様の検討をしており、今回はさらに焦点を絞っている。
一時的な物価水準目標(Price Level Targeting)を勧めるとし、物価目標の引上げ、(恒久的な)物価水準目標と比較している。

物価目標の3つの候補

(3-4%への)物価目標の引上げ
FRBが物価目標を3-4%に引き上げ、市場がそれを信用して期待インフレを上昇させれば、名目金利は上昇する。
名目金利が上昇すれば、次の景気後退期に利下げ余地が大きくなる。

  • 利点: 単純かつ物価目標の枠組みで行える。
  • 欠点: 高インフレは不人気。長期経済計画が難しくなる。市場の価格シグナルが解釈できなくなる。ポール・クルーグマンほかの理論的研究によれば、物価目標引上げはゼロ金利制約への対処としては非効率とされている。
(恒久的な)物価水準目標
超長期で物価上昇率が平均2%ととなるように金融調整する方法。
目標を下回った期間が出れば、後の期間で目標を上回るようにする。

  • 利点: 物価安定の使命に適う。理論的に最適な金融政策にとって望ましいとされる「長期的な低金利」、「埋め合わせ」といった性質に合う。
  • 欠点: FRB政策の枠組みを大きく変化させるため、公衆や市場の理解が得られにくい。サプライ・サイドの原因でインフレが一時的に急騰した場合、FRBは2%を下回るような引き締めを行わなければいけなくなる。
一時的な物価水準目標
ゼロ金利制約の近傍でのみ物価水準目標を適用する方法。

  • 利点: ゼロ金利制約にない場合には、FRB政策の枠組みを変えずにすむ。
    インフレ急騰時には物価水準目標はオフになるため、過度な引き締めをする必要がない。

(次ページ: 目標は期待をアンカーできるか?)