海外経済 投資

ウォール街 ベアは死なず

FRB利上げサイクル終了が時間の問題との見方が増えてきた。
利上げ終了後に米国株が最後のひと上げを演じる経験則は有名だ。
今回も最後の一上げは残っているだろうか。


今回も経験則どおりと予想するなら、ここは強気であるべきだ。
しかし、市場にはいまだに弱気派も多いのが現実。
2人紹介しよう。

まずはモルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏。
この数年、弱気スタンスの多さが目立っている。
Bloombergのキャスターからは「何があったら降参するの?」といじられるほどだ。
セル・サイドで長く弱気を続けるのは何かと風当りが強いだろうが、少しもめげない。
最近のレポート(Bloomberg報)でも投資家の声を伝えている。

「当社が話を聞いている限り、投資家の過半数は『押し出された』派であり、来年はリスク資産にとって今年よりも厳しい年になりそうだと考えられている」

ウィルソン氏は年内のS&P 500を10%下落と予想している。

もう1人はJPモルガンのマルコ・コラノビッチ氏。
この人はかなりドラマチックな表現を好む。
最近のレポート(Bloomberg報)で米経済への慎重な見方を示した。

「われわれの考えでは、原油価格の上昇と根強いインフレ、地政学、イールドカーブスティープ化のリスク、これら全てが将来のソフトランディング確率を引き下げている」

こうした見方を背景として、株式・クレジットでディフェンシブ、エネルギー等コモディティでオーバーウェイトを奨めている。

コラノビッチ氏は今月初めのレポート(Business Insider報)でもう少し踏み込んだ表現を用いている。

「私たちの慎重な見通し(金利と地政学)の両方が過去数か月悪化しているのに、ポジションとバリュエーションは上昇し、今後6-12か月で危機が起こる確率は高まったと考えている。
その深刻さは、市場参加者が予期するより高くなりうる。」

コラノビッチ氏は楽観に転じる条件として全世界での金利低下と地政学的緊張の緩和を挙げるが、当面は改善より悪化が予想されるとしている。

市場の強気派の心のうちは測りがたい。
一部には米経済がソフトランディングまたはノーランディングすると考える真正の楽観派もいるのだろう。
一方で、これから起こるのが最後の一上げであると考え、今は強気を通している人もいるだろう。

そうした人たちとは別に、米景気後退入りを時間の問題と見る人も多い。
歴史的な規模の財政政策の後の金融引き締めだったために、景気を冷やす効果が出るまでラグが大きかった。
ラグが大きくとも、いつかは景気は冷えるという立場だ。
そうした意見の人の多くが2024年までの景気後退入りを予想している。

大方の関心事はリスク市場だ。
通常、株式市場が景気に先行する。
2024年までに景気後退に入るなら、株式市場のピークアウトは待ったなしかもしれない。

さらに興味深いのは投資家だ。
経済ウォッチャーにいろいろタイプがあるように、投資家にもいろいろタイプがある。
マーク・モビアス氏は以前自身のことを、他の人が悲鳴を上げている時にワクワクするタイプの投資家と話していた。
日本の投資家にもこうしたタイプは多い。
共感する読者には、待ちかねたチャンスがやってくるかもしれない。


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