ブラックロック

 

ブラックロック:金利が低い本当のワケ

資産運用の世界最大手BlackRockのJean Boivin氏が、世界的な低金利の要因を解説している。
金利上昇が起こらないのは単に喜ぶべきことではなく、むしろ不安の裏返しなのだという。


低金利は緩慢な潜在成長率、中央銀行が予見可能な安定的インフレを実現できていることによるものだ。
しかし、もう一つ低金利を説明する上で見過ごされている重要な要因がある:
過去20年にわたるリスク回避と貯蓄の構造的増大だ。

Boivin氏が自社ブログで低金利の金融市場側の原因を指摘している。
中立金利r*を決めるのは潜在成長率だけでなく認識されているリスクだと解説している。
経済主体や市場がリスクを感じると、予防的に貯蓄を増やし、それがr*までも押し下げてしまう。
1998年のアジア通貨危機後、再発を恐れたアジアの新興国は外貨準備積み上げに血道を上げる。
こうした貯蓄の積み上がりは次第に世界の他の国々(欧州危機後の欧州など)へと伝染していく。
バーナンキ前FRB議長が世界的貯蓄余剰と指摘した現象だ。

「ブラックロックの推計では、リスク回避増加と潜在成長率低下はリーマン危機以来それぞれ同じ150ベーシスずつ米国のr*を押し下げていることがわかった。
・・・
世界の貯蓄は溢れかえり、いまだに増加している。」

ここまでなら多くの人がすでに認識していることだろう。
ここでBoivin氏は、もう一つ世界の貯蓄と強く連動する指標を挙げる。
それは金利に含まれる期間プレミアム(ざっくり長短スプレッドと考えればよい)であり、換言すればイールド・カーブの傾きである。
貯蓄余剰はr*だけでなく期間プレミアムも押しつぶしたのだ。


期間プレミアム、あるいはイールド・カーブの傾きは目下の市場の最大の関心事の一つだ。
イールド・カーブの逆ざや化(期間プレミアムのマイナス化)は不況・市場下落の到来の有能な先行指標であり、そのカーブが急激にフラット化している。
これが市場関係者の不安材料になっており、この不安がさらに米国債、とりわけ長期債への買いを誘い、長期金利の低下要因になりかねない。

しかし、イエレンFRB議長はこの連想を杞憂と指摘する。
イールド・カーブ逆ざや化が先行指標として優れていることを認めつつも、それは「相関であって因果関係ではない」と指摘する。
逆ざや化が不況をもたらすのではないとし、今回のフラット化を心配する必要はまだないとの考えだ。

議長がこう言うのにはわけがある。
バランスシート縮小に着手したFRBにとっては、期間プレミアムの縮小より増大の方がはるかに脅威だからだ。
FRBが長期債への再投資を減らせば、債券市場の長期ゾーンで需給が緩み金利上昇要因となる。
ただでさえトランプ政権は減税のために国債増発を余儀なくされる。
つまり、FRBにとっての目下の最大の脅威は長期金利上昇が経済・市場をオーバーキルすることなのだ。

Boivin氏は現在の低r*、低期間プレミアム、低金利が継続すると考えている。
リスク回避の受け皿としての国債の需要が減退すれば金利上昇要因となるが、同氏はそうならないとみている。
ただし、現状維持は手放しで喜ぶべき未来でもないようだ。

「史上最高水準にある世界の債務のストックはさまざまな経済主体をさらに脆弱にし、将来のショックに対するバッファーとして貯蓄を増やす動機を与えるだろう。」


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