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ファンダメンタルズはこれまでになくドル安・円高:佐々木融氏
2021年5月1日

JPモルガンの佐々木融氏が、ドルのファンダメンタルズの悪化に着目してドル安を、さらに日米の差に着目してドル安・円高を予想している。


昨年3月以降、現在までのドル/円相場の上下動の背景にあるドライバーは、下落局面では2回とも「ドル安」主導、上昇している時には「円安」主導だったことがわかる。
要するに昨年3月以降、ドルは基調として弱い状態が続いている。

佐々木氏がReutersへの寄稿で、(ドル安+円安)とでも言うべき局面でのドル円の読み方を説明している。
同氏によれば、

  • 2020年3月から2021年初めの円高ドル安: 円高ではなくドル安
  • 2021年初めから3月末までの円安ドル高: 円安が主導

これは、ドル円と実効為替レートを比べれば一目瞭然だ。

ドル円(青、左)とドルの実効為替レート(赤、右)
ドル円(青、左)とドルの実効為替レート(赤、右)

昨年パンデミックが深刻化すると、とりあえずドルを買う需要が増え、ドル高になった。
そこからの円高ドル安は、実効為替レートのドル安に沿った動きになっている。
一方、今年初めからの円安ドル高では、ドルはほとんど上昇していない。
むしろ、円もドルもたいして魅力はなく、この刹那ではドルの方がましと思われたと見る方があっているかもしれない。

佐々木氏は、ドルのファンダメンタルズがパンデミックによって大きく悪化したと指摘する。

筆者(佐々木氏)はドルを取り巻くファンダメンタルズが昨年以降の新型コロナウイルス感染拡大を受けて、極めて悪化しているとみており、昨年3月に始まったドルの下落トレンドは今後も長期的に続く可能性が高いと考えている。
そして、結果的に緩やかながらもドル/円相場の下落圧力につながると考えている。

佐々木氏が挙げたドルのファンダメンタルズの悪化は3点:

  • 貿易赤字の拡大
  • マネーストック(M2)の急増
  • 日米で実質金利は日本の方が高い

佐々木氏は周到に、ありうる疑問の例を挙げ、それに対して解説している。
ここでは、その議論と関連するチャートを過去のFP記事から紹介しよう。

疑問)FRB利上げ(またはその期待)がドル高を呼ばないか?
解説)前回はそうだったが、そうなるとは限らない。
また、経済がピークアウトし、増税も控えるとなれば、利上げは容易には行えない。

FF金利(青)、米10年債利回り(赤)と米ドル実効為替レート(緑、右)(2001-08年)
FF金利(青)、米10年債利回り(赤)と米ドル実効為替レート(緑、右)(2001-08年)
(出典: 【グラフ】FF金利とドル、新興国通貨の関係

疑問)テーパリングが米長期金利を上昇させ、ドル高を呼ばないか?
解説)前回、テーパリングの間(2014年1-10月)長期金利は低下した。

米10年債利回り(青)と10年の期待インフレ率(赤)
米10年債利回り(青)と10年の期待インフレ率(赤)
(出典: 2022年には財政出動の反動が来る:ゴールドマン・サックス

最後に佐々木氏は、為替レートを説明する上で最も基本的で長期的な指標であるインフレ率の差に言及している。
この差が8年ぶりの大きさに開いていると指摘した後、結論を述べている。

現在のドル/円相場を取り巻くファンダメンタルズは、これまでにないほどドル安・円高方向へ傾いている。


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