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ピーター・シフ氏は守りには長けていなかった。

ユーロ・パシフィック・キャピタルのピーター・シフ氏がオーストラリアを中心とする脱税スキーム疑惑について国際タスクフォースと豪メディアからの追求を受けている。


ユーロ・パシフィック銀行は・・・オーストラリア人と国際的組織犯罪シンジケートにより利用されてきたとの疑いに基づき、オーストラリアにとっての『トップ級』の組織犯罪による脅威とみなされてきた。

豪Nine Entertainment傘下のBrisbane Times、The Ageなどが伝えた。
もっとも、ユーロ・パシフィック銀行が犯罪に利用された疑いは今に始まったことではないらしい。
同行の利用者には脱税で収監された実業家、サイバー犯罪者、麻薬シンジケートのマネーロンダリング容疑者などが含まれているという。
シフ氏は1月に米豪の税務当局の訪問を受け、捜査に協力してきたと明かし、銀行として違法行為への関与はないと主張している。

シフ氏はユーロ・パシフィック・キャピタルを創業し、同氏独自の相場見通しから顧客に貴金属や外国資産への投資を奨めてきた。
同社自体はすでに売却され、今ではユーロ・パシフィック・キャピタルは買い手企業の一部門になっている。
同時にシフ氏は米国の準州プエルトリコに移転している。
ユーロ・パシフィック銀行は2017年にプエルトリコで設立されている(会社ウェブサイトでは「移転」とされている)。
同行のオーナーはCEOを務めるマーク・アンダーソン氏だが、シフ氏も45%の持分を有しているという。

シフ氏によるプエルトリコ移転という選択は、タックスヘイブンでありプライバシーが守られるという理由によるものだった。
これはシフ氏個人にも、銀行業にとっても都合がよかったのだろう。

同氏のリバタリアンともいわれる志向はまさに筋金入りであり、お家芸でもある。
父親は税金を否定する活動家アーウィン・シフ氏
税金を拒み、度々有罪となった。
自由の国、米国の歴史上2冊しか存在しない発禁本のうちの1冊を著した。
2015年、脱税の罪で収監中に獄中死している。

シフ氏は今回、豪版「60 Minutes」のインタビューを受けているが、早々と席を立ってしまった。
畳みかけるように議論を挑むいつもの様子とはかなり違う。
銀行が積極的に関与したかどうかは不明だが、脇の甘さ、あるいは、意図的な脇の甘さが犯罪の温床となっていた可能性は高い。
いつも正論で持論をオブラートするシフ氏からすると、少々苦手な展開なのだろう。

あおりを食ったのはユーロ・パシフィック銀行のパートナーと宣伝された機関だ。
これまでのパートナーとして挙げられたのはWestpac(コルレス)、西オーストラリア州政府パース造幣局(金販売)、ニューヨーク連銀、英NatWest、加モントリオール銀行、みずほ銀行など。
顔ぶれを見る限り不正に積極的に加担するとは思えないが、名前や機能をうまく利用された面はあるのかもしれない。

今回の捜査は米・豪・英・蘭・加の5か国によるタスクフォース「J5」によるもので、ユーロ・パシフィック銀行に貼られた「豪優先組織ターゲット」というレッテルは豪犯罪情報委員会による最も深刻な分類を指すのだという。
シフ氏は今回の問題をうまく切り抜けられるだろうか。
公共の利益という正論を盾に、持論を正当化することの多い同氏。
金融政策ももちろんだが、暗号資産については犯罪に利用されていることも批判の材料としてきた。
現時点ではまだ父親アーウィンと似た道を歩むとは思えないが、そこそこの危機であることは間違いない。


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