ビル・グロス:パウエルで金融危機を回避できるか

債券王ビル・グロス氏が次期FRB議長に指名されたジェローム・パウエルFRB理事についてコメントした。
その手腕を高く評価する一方、マクロ経済への知見という点で心配も語った。


「彼は元プライベート・エクイティ投資家であり、最近5年はFRBで仕事をしている。
規制に対する姿勢は寛容に見え、市場は歓迎するだろうが、私にとっては必ずしも喜ばしくない。
そして、彼は債務ベースの金融システムについて適切な理解をできていないように見える。」

グロス氏はFoxで、パウエル理事について政界・金融業界でのキャリアを大いに評価した後、苦言を呈した。
パウエル氏は弁護士出身だが、ブッシュ(父)政権で財務次官、プライベート・エクイティのカーライル・グループで共同経営者を歴任するなど官民にわたるキャリアを積んでいる。
経済学者ではないものの、パウエル氏指名は政界・市場から概ね高い支持を受けている。

その中でグロス氏が特に苦言を呈したのは、金融安定に関する2点だ。
リーマン危機後の金融規制には過剰との批判も多いが、だからと言って安易に規制緩和を行えば大惨事を繰り返しかねない。
そのさじ加減がうまくいくかという点。
そして、経済モデルの議論である。
債務の超長期サイクルが転換するかもしれないと騒いでいる時に、中央銀行は相変わらず金融機関の存在を過小評価した経済モデルを使い続けている。


「プライベート・エクイティの投資家であった彼には信用創造、信用崩壊、シャドウ・バンキング等の感覚はないだろう。
彼のスピーチは内部のテーマについてのものが多かった。
将来、リーマン危機の再来の危険性が高まった時、何が起こっているか理解している議長が必要だ。
彼が、それを果たせるかどうかはわからない。」

プライベート・エクイティの主たる収益機会は景気・市場の循環ではない。
もちろん株式が上がれば儲かるのだが、それに依存すれば単なるマーケット・タイミングになってしまい、いい結果は得られないだろう。
プライベート・エクイティの主たる収益機会は、

  • 流動性の低い株式を上場させ、非流動性ディスカウントを取り払うこと
  • 対象事業の隠れた力を引き出したり、投資家にアピールすること

ここには法律家の果たすべき役割は多いが、マクロ経済学者の果たす役割は小さい。
逆に、金融危機というような非常事態で、マクロ経済の経験が少ないことがハンディとなるかもしれないとグロス氏は心配しているのだ。
一方、グロス氏は先行きの金融政策正常化のペースについてはそれほど心配していないように見える。

「FRBのほとんどとパウエル氏は正常なFF金利を2%と考えているように見える。
これは、現在の債券利回りがやや低いものの、低すぎはしないことを示唆している。
実体経済はそれに順応するだろう。
はるかに高くなった場合はわからないが・・・」

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