ビル・グロス:イールド・カーブよりFF金利

ビル・グロス氏が月例書簡の公表前に、注目点の変更を示唆している。
最近まで米イールド・カーブのフラット化への危惧を繰り返していたが、今は他のことに注目しているようだ。


「フラットなイールド・カーブは過去のサイクルほどは重要でない。
過去のフラット化はFRBの過度な引き締めによって起こったものだった(が、今回は違う)。」

グロス氏がBloombergに寄せたEメールによれば、投資家はイールド・カーブのフラット化に囚われすぎているのだという。
確かに米国債の10年-2年スプレッドは急速にタイト化している。
景気がいいのに長期金利は上昇せず、FF金利引き上げを先回りするように短期金利は上昇している。

米10年債(青)・2年債(赤)利回りと10年-2年スプレッド(緑)
米10年債(青)・2年債(赤)利回りと10年-2年スプレッド(緑)

イールド・カーブのフラット化・逆ざや化は経済・市場にとっては不吉な兆しであり、市場や金融メディアの注目を集めている。
一方で、強気派には「This time is different.」と楽観視する人も少なくない。
FRBでもその解釈について意見が割れている。


当のグロス氏は9月イールド・カーブがフラット化しなくても不況が起こりうると指摘していた。
経済のレバレッジが以前より上昇しているためだ。
先月には信用サイクルが反転を始め米国株市場がピーク近いとの現状認識を示している。
しかし、今は見方がやや変化したようだ。
量的緩和を続ける日欧からのマネー・フローによって、低位の米長期金利(≒フラットなイールド・カーブ)は持続可能だというのだ。
では、目下のグロス氏の注目点は何なのだろう。

本当の決定的要因は短期金利の水準であり、中立的な実質FF金利だ。

市場予想どおり来週のFOMCで25bpの利上げが実施されれば、FF金利誘導目標は1.25-1.50%となる。
足元のインフレが2%弱と考えれば、実質FF金利はゼロ%弱ということになる。
FRBの考える実質中立FF金利はゼロ近傍と言われているから、FF金利にはまだ引上げ余地がある。
今後インフレが2%目標に近づくとすれば、FRBは名目FF金利を2%程度まで引き上げても景気を冷やさずにすむ。
グロス氏は、その2%を超えれば悪影響が及ぶと考えている。
では2%のFF金利とはどういう水準だろう。

FOMC参加者によるFF金利予想(2017年9月)
FOMCドット・プロット(2017年9月)

FOMC参加者は9月の時点で来年2%を超えると見ていたようだ。
9月以降、FRBはやや強気に振れているように感じられ、グロス氏はこれを恐れている。
一方、市場関係者はそうした点を見透かしているようだ。

先物市場に織り込まれたFF金利
先物市場に織り込まれたFF金利

市場の方は、利上げペースがもう少し遅くなると見ているのである。


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