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ビットコイン急落の原因と市場への波及:ジェレミー・シーゲル
2021年5月22日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、ビットコインの急落時における市場全体の反応から、強気相場の継続を予想した。


中国のビットコイン対策も重要だが、もっと重要なのは、米国で税務やマネーロンダリング関連の報告義務に関しビットコインへの規制が強化される可能性があることで、これはもっと甚大だ。
3つ目がボラティリティが高いという事実だ。

シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで、珍しく自分からビットコインに触れた。
教授は、暗号資産のボラティリティが高いことが通貨としての用途の妨げとなっているとして、暗号資産の様々なストーリーについて「少し色あせてきた」と指摘した。
一方、こうしたストーリーへの疑問が高まるのと裏腹に、金など伝統的ヘッジ手段が息を吹き返していると指摘した。

水曜日の朝ビットコインが30,000ドルに向かって一直線に落ちた時興味深かったのは、確かにテクノロジーやNASDAQで少し売られたものの、市場全体に大きな混乱がなかったことだ。・・・
市場は少し売られ、元に戻った。
これは健全なしるしだ。
もう1つの健全なしるしは、私がスーパーテックと呼んでいるスノーフレーク、テスラのような会社が30-40%下げても、S&P 500が史上最高値から2%のところにあることだ。

シーゲル教授がビットコインを今週のテーマの1つに取り上げた理由はこれだろう。
過去のバブルのほとんどで、看板銘柄とでもいうべきとびきりのバブル銘柄が存在した。
バブルの多くは、そうした看板銘柄の瓦解とともに崩壊を迎えた。
今回その候補と挙げられてきたのが暗号資産でありテスラだ。
しかし、今回はこれらに相応の下落が起こっても市場全体に大きく波及することがない。

シーゲル教授は、下げる銘柄があっても全体が大きく下げない状況を「健全なローテーション」と呼んでいる。
ファクターでは、バリューのアウトパフォームを引き続き予想している。

全体としてまだ株式の強気相場は続くと見ており、おそらくさらに10、12、15%上昇し、企業収益は急伸し、上方修正が続くだろう。・・・
株式市場にはまだピークは見えない。

市場の強さは、FRBの動向に対する反応にも表れている。
19日公表のFOMC議事録では、メンバーの何人かがテイパリング検討が必要になる可能性に言及していたことが明らかになったが、これに対する市場の反応もごく短時間のものだった。

「FRBの何人かがテイパリングについて話し合うことを話し始めた。
FRBがやるべきことの、まだ初めの初めの段階だ。
誰も考えていなかったのなら、みんな脳死していると言わなければいけないところだった。
間違いなくインフレは現在脅威になりつつあり、FRBは対処を考えるべきだ。」

シーゲル教授は、コンセンサスより高いインフレを予想してきた。
それだけに、インフレに無防備に見えていたFRBに強く危機感を抱いていた。
とりあえず、FRBは脳死状態ではないことが明らかになった。

ヘッジ手段としての債券の有効性について尋ねられると、シーゲル教授は久しぶりに知的な、そのため難解な解説を始めた。
近時、株式と債券が順相関(または債券が動かない)になっていることを踏まえた質問だ。
通好みの含蓄のある発言だが、ごく表面だけを紹介しよう。

シーゲル教授の論点は、足元のインフレの性質にある。
教授によれば、足元のインフレは、人々が再来を恐れる1970年代の供給ショックとは性質が異なるという。
石油ショックでは、潤うのは産油国だけであり、それによるインフレはOPECが継続する限り続き、特に原油輸入国では《悪いインフレ》でしかなかった。

今見られる供給不足のタイプはすべてではないがほとんどが需要の急増によるものだ。・・・
結局のところ、これが需要による変動であるなら、債券のベータはマイナスにとどまるが、インフレ分を補償まではしない。

今は経済が再開し、家計・企業が一斉に支出を始めたところだ。
このため需要が急増し、供給が追い付いていない。
確かに、脱グローバル化やサプライチェーン分断の問題はあるのだろうが、長い目で見れば供給力も増強されよう。
OPECだけで影響力の大きな価格を統制できていた1970年代とは異なる。
2桁インフレを恐れるような状況ではないと言いたいのだ。

どの程度のインフレが経済や株式に有害なのかは意見があろうが、シーゲル教授はまだしばらくそこまで達しないと考えている。
そうならば、当面は株式にプラス、債券にマイナス。
言い換えれば、株式・債券が負の相関、またはマイナスのベータとの見立てになるのだろう。
(つまり、現状は一時的という意味だろう。)

私は累積で20%のインフレを予想したが、10年のスパンで見ると、10年金利で年あたり2%になる。
10年金利は底値からすでに110 bp上昇している。
だから、あと100 bpぐらい上昇、オーバーシュートするなら150 bp上昇するかもしれず、3.00-3.25%となる。
インフレが定着せずに、FRBが将来のどこかでマネーサプライにブレーキを踏まないなら、相関の変化が起こらず、全体の金利の構造が1960-70年代よりはるかに低くなるかもしれない。


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