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パラダイム・シフトに備える資産選び:レイ・ダリオ
2019年7月19日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏によるパラダイム・シフトに関するコラムの第2弾。
同氏が資産クラスごとにコメントした部分を紹介する。


こうした世界では、資産を現金や債券で持っておくことがもはや安全でなくなる。
債券とはお金を請求する権利だが、政府は減価するお金で借金を返すためにお金を印刷し続ける可能性が高い。
これが最も簡単で反対の少ない債務削減法であり、増税が不要なのだ。

ダリオ氏が自身のSNSで、現金・債券を保有するリスクを説いている。
従来よほどのことがないかぎり元本割れが考えにくかった現金・債券にリスクを感じるべき時代が来たようだ。
各国の中央銀行の多くが迷うことなくインフレや通貨安を望んでいるからだ。
自国通貨の下落が望まれている時、アップサイドのない現金・債券を保有することはリスクとなってしまう。

このリスクはどれほど大きいのか。
ダリオ氏は通貨安を別として、金利上昇のリスクはさほど大きくないと見ているようだ。

債券は保有者に対し良くない実質・名目リターンしか与えないだろうと推測している。
しかし、大きな価格下落や金利上昇は起こらないだろう。
各国中央銀行が金利を低位に抑え価格を支えるために買い入れを増やす可能性が極めて高いからだ。
換言すれば、新たなパラダイムとは、大規模な債務のマネタイゼーションを特徴とし、1940年代の戦時中に起こったことと最も似てくるだろうと見ている。

1940年代とはどんな時代だったろうか。
ダリオ氏は数年前から1937年と足元を比較していた。
1933年の金本位制停止が2008年以降の量的緩和とダブり、引き締めに転じたのが1937年(とおそらく2018年)というわけだ。
1940年代は戦争のために財政が圧迫された時代でもある。
1942年FRBは財政を支援するために長期金利にキャップを設定している。

すでに読者は気づいていようが、パラダイム・シフト後の米国とはこれまでの日本、とりわけ長期金利ターゲットを導入した後の日本とよく似たところがある。
だからこそMMT論者は日本を(少々マネタイゼーションしても大丈夫な)例に挙げるのだ。
そう考えると、ダリオ氏の予想は、米国の日本化にすぎない面もある。
もしそうなら、日本も米国も同じ悩みを持ち始めるはずだ。

くしくもダリオ氏がその悩みを指摘している。

最良の準備通貨の中央銀行が不換通貨制度の中でその通貨を減価させようとしている時、次に望ましい通貨あるいは富の保管場所が何かを問い直すべきだ。

ここからダリオ氏の資産クラス選びが始まる。
まず、旧パラダイムの旗手が除外される。

「ほとんどの人は、最良の『リスク投資』が引き続き株式やそれに似た投資(レバレッジのかかったプライベート・エクイティ、レバレッジのかかった不動産、VC)であると信じている。
これは特に中央銀行がリフレ政策を採っている時は正しい。」

リフレ政策が進行中で効いているうちは株などのリスク資産が一番手になるはずだ。
リスク資産は金融緩和の恩恵を強く受ける。
株式の最も単純な理論式、利益÷割引率 を思い出そう。
金融緩和は分子を大きくし、分母を小さくする。
だから、株はこれまでよく上がった。
しかし、刺激策が行き着くと話は別だ。

刺激策が行き着くとは、資産効果で言えば、資産価格が伸び切ること。
結果、将来の期待リターンは(投資額=価格が大きくなる分)小さくなる。

ダリオ氏は、現在の世界が低リターンの資産に高いレバレッジがかかっている状態と説明し、こうした資産が良いリターンを与えてくれるとは考えにくいという。
そして、少々月並みな結論を引き出している。

最良のリターンとなる可能性があるのは、金のように、お金の価値が減価し、国内・国際的対立が大きい時に良いリターンを与えてくれるものだろう。
・・・ほとんどの投資家はこうした資産を過小評価している。
もしも投資家がリスク削減のためにポートフォリオのバランスを改善したいなら、こうした種類の資産を増やすべきだ。
この理由で、リスク削減とリターン改善の両方において金をポートフォリオに加えることを奨める。

ダリオ氏が金を推奨するのは今回が初めてではないから驚きはない。
ただし、日本人、あるいは円を自国通貨としている投資家は用心が必要だ。
ダリオ氏はドル建て金価格が比較的有利と言っているが、円建て金価格には言及していない。
もしも、リスク・オフの円高・ドル安が健在なら、金投資の魅力は減殺されてしまうかもしれない。
あるいは、円もドルもどんどん減価していくというなら、こうしたリスクも杞憂ということになるが、その場合は金上昇を打ち消してあまりある悲しい出来事が多く起こることになるのではないか。


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