以前の記事で、セス・クラーマン氏がグレアム&ドッド『証券分析』第7版 の編者を務めたことをお伝えした。
その時、当代の現役バリュー投資家として、クラーマン氏のほかにハワード・マークス氏とデービッド・アインホーン氏を挙げた。
今回はアインホーン氏の第一線での目撃談を紹介しよう。
バリュー投資ほど曖昧に議論されている主要な投資用語はあるまい。
仮に、バリュー投資を低PER株、低PBR株、高配当株への投資とするなら、そんなやり方はベンジャミン・グレアムの時代に終わっているはずだ。
バリュー投資の神様とされるウォーレン・バフェット氏だって、頭角を表した頃からそんなやり方をしていない。
いわゆるバフェトロジー・ワークブックを一瞥するだけでわかるが、バフェット氏はバリュー投資を進化させている。
バリュー投資2.0を実践し大成功を収めたが、それも前世紀までの話。
今世紀に入ると、バフェット氏も凡庸な投資家となり、バリュー投資は苦難の時代を迎え、いまだ大転換は到来していない。
(それでもバフェット氏が偉大な人物であることは変わらない。)
バリュー投資2.0の時代も終わったというのに、人々はいまだにバリュー投資1.0を議論している。
グロース対バリューといったファクター分析がその最たるもの。
ここでのバリューとはバリュー投資1.0、つまり株価倍率が低いなどの単純な基準による銘柄群だ。
何十年も前にダメ出しが済んでいるやり方について議論を続けているのだ。
それもやむをえない。
クオンツをやっている人たちが、表面的な数字を超えて個々の銘柄の中身まで入り込むのには限界がある。
あまり複雑な分析まで踏み込めば、一般の投資家に対するメッセージとしては難解となり、得体のしれないブラックボックスになりかねない。
だからあまり意味のない分類が使われ続ける。
現役バリバリのバリュー投資家、デービッド・アインホーン氏がMoney Maze Podcastで、バリュー投資家としてインタビューを受けている。
「まだ、バリュー投資家が残っていると知って、少しびっくりしたよ。
とてもすばらしい。
私たちが国立自然博物館とか、恐竜の隣に並べられていなくてよかった。」
アインホーン氏は冗談交じりに話を始めた。
同氏はロング/ショートを駆使したバリュー投資家。
バリュー投資3.0を模索する1人だが、その話の結論は、以外にもバリュー投資1.0の復権を予期するような内容だった。
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