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バリュー投資の終焉:アスワス・ダモダラン
2020年5月31日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授のET NOWインタビュー第2弾: 「20世紀のバリュー投資」が機能する時代は終わったと述べた。


バリュー投資家はまだ20世紀から抜け出せていない。
まだ簿価に何か意味があると思っている。
私はそもそも会計士を信用していないが、簿価は完全にその意味を失っている。

ダモダラン教授は、20世紀のバリュー投資がその有効性を失っていると話した。
グーグルを例に、その最大の価値はバランスシートに計上されていないと指摘。
企業の価値(将来の収益を生む力)が過去の財務諸表、とりわけバランスシートに表れていないなら、それを元にする投資、ひいてはそれを元にするファクターの分類さえ意味が薄いことになる。

だから、バリュー投資・グロース投資の問題とはバリューやグロースへの注目にあるわけではなく、何にも注目していないところにある。

「旧来のバリュー投資では、低PER、低PBRで買うのをバリュー投資と呼んでいる。
グロース投資は、利益・売上の成長率が高い銘柄に飛び乗ることだ。・・・
グロース銘柄にバリュー投資できるか? もちろん。」

ダモダラン教授は、旧来のバリューとグロースの二分法に無理があると指摘する。
しかも、機械的に設けたファクターの基準にしたがって投資をすることは良い結果をもたらさないという。

「彼らは目の子としてこれら数値に注目するが、これら数値は役に立たない。
いずれのタイプの投資もインデックス・ファンドに負けている一因は、機械的にやっているからだ。
機械は機械的なことをあなたよりはるかにうまくやる。」

バリュー投資の概念が曖昧とのダモダラン教授の指摘はその通りだろう。
実際、バリュー投資の定義・概念は時代とともに変化してきた。
古くは「バリュー投資の父」ベンジャミン・グレアム。
財務諸表分析との比較で株価を評価することの重要性を説き、これが「20世紀のバリュー投資」の礎の1つとなった。
ただし、『賢明なる投資家』を紐解けばわかる通り、グレアムの考えの中で株価倍率等は重要だが一部に過ぎない。
その愛弟子がウォーレン・バフェット氏。
(中期の)同氏のスタイルは、事業の中身、それを背景とした超過収益力に重点が置かれている。
最近では、バリュー投資をもっと広い意味で使う人が多い。
企業の根源的価値に比べて割安なものに投資することをバリュー投資と呼ぶ場合だ。
ダモダラン教授の《21世紀のバリュー投資》は、これにあたるのだろう。
こうした定義に対して、ハワード・マークス氏は、ある意味ですべての投資はバリュー投資といえる、と話していた。
よほどおかしな人でなければ、自分が信じる基準に照らして割高な資産をわざわざ買う人はいないだろうからだ。

話を戻そう。
ダモダラン教授が言いたいのは、株価サイト等で誰でもすぐに見られるような指標で行うバリュー投資、グロース投資では市場全体に勝てないということだ。
さらに、特にバリュー投資、つまり「20世紀のバリュー投資」については、リーマン危機後一貫してグロースに負け続けてきたと指摘する。

旧来のバリュー株、低PER・高配当利回りの株は、高PER・無配当の株よりアンダーパフォームしてきた。
10年の間、バリュー投資家は危機を待てと言ってきた。
危機が来れば、バリュー投資が復活すると。

バリューは景気後退期に強いというのが経験則。
ほぼ一本調子の上げ相場では相対的に負けてしまう。
逆に、本格的な景気後退が来れば、再びバリューが有利になるとの期待があった。
そしてついに、史上最も長く待たされた景気後退がやってきた。

私がこの危機で見出したのは少なくとも、一番ひどくやられた株が低PER・高配当の株だったということだ。
あなたがバリュー投資家なら、あなたの最後の武器は失われた。・・・
旧来のバリュー投資家は、もはや意味のない数字に固執しているだけだ。

たった1回、しかも景気後退はまだ入り口かもしれないのに、こうした結論を下せるのかは大きな疑問だ。
ただし、PER、PBR、配当利回りなどがそれだけではたいした意味を持たないことが理論的真実であることは心に留めておくべきだろう。


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