アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、いつものようにバリュー投資家に対しクセになる毒舌でディスりまくっている。
バリュー投資は地上で最も怠惰な生き物だ。
《バリュエーション学長》がMicha.Stocksのインタビューで、旧来のスタイルのバリュー投資を批判している。
教授は6年前にオマハ詣でに集まる人たち(バークシャー・ハザウェイ株主総会に参加するバフェット・ファン)に「バリュー投資のバリューはどこにあるのか」と題する講演を行ったのだという。
言いたかったのは、バリュー投資家が決して企業の価値評価をしていないということだった。・・・
PERが低いと飛びつき、儲かるとしても理由は優れた洞察ではなく中央回帰だ。
ダモダラン教授は、仮定した「中央回帰」が起こらなければ、「バリュー・トラップに陥る」と多くのバリュー投資家のやり方を危ぶむ。
教授の主張は単純だが的を射ている。
バリュー投資家は実はバリューを見ていない。
見ているのはPERだけ。
そのPERは見るべき多くの指標のうちの1つに過ぎない。
バリュー・ベースの投資を促してきたダモダラン教授がバリュー投資家を批判する。
多くの自称バリュー投資家が名ばかりに過ぎないためだ。
そして、バリューを見ないバリュー投資のもう1つの問題点を指摘する。
多くのバリュー投資家が単にPERを見る場合、それはほぼ定義からして決してグロース銘柄を買うことにはならない。・・・
価値評価を行わなければ、割安な企業を探すというニーズにフィットしたグロース企業を見出すことは困難だ。
ウォーレン・バフェット氏はこの20年あまり、過去の輝きを失っている。
それでも明るく輝いているのは間違いないが、やはり前世紀のまばゆさはない。
テクノロジー分野への取り組みが遅れたためであり、すでに良い企業に集中しすぎたためだろう。
その点、ダモダラン教授はグロース銘柄に積極的だ。
主要グロース銘柄だけでなくIPO銘柄についても評価・投資検討している。
教授は、2013年からテスラ株の評価を続けていたことを明かし、ついに2019年に投資に踏み切ったと語った。
「その時点で30万台しか売っていなかったのに割安だった。
大きな損失を垂れ流していたのに割安だった。
経営者には信じられないほどビジョンがあるが、ティーンエイジャーのように振舞い、限度・節度の感覚がないのに割安だった。」
いつもながら、なかなかの毒舌ぶりだ。
しかも、不必要に毒がある。
ダモダラン教授は、大赤字のテスラに、当時すでに割高と思われていた株価でエントリーした。
いうまでもなく、将来の「ポテンシャル」を見たからだ。
そして、それを見ようとする努力こそが株価評価だと説いている。
そのためには未来にジャンプして、『今のテスラは気にしない。テスラがどうなるかだ』と言わないといけなかった。
それには、スプレッドシートに数字を入力するだけでなく、会社のストーリーを語らなければいけない。
ダモダラン教授の得意技は毒舌のほかにもう1つある。
それは自慢話である。
眉1つ動かさず毒舌を吐き、うっすらとドヤ顔をして自慢話をする。
教授が買ったテスラ株は、わずか6か月のうちに4倍に化けたのだ。
「割安と思う株を買う時、2つの心配がある。
1つ目は私が間違っていて、株価が下げ続けることで、これは問題だ。
2つ目は奇妙な問題だが、株価が上昇するが、急騰する場合だ。」
2つ目はまったく問題ではないと思うが、ダモダラン教授がいいたいのは自慢話だけではない。
信念の問題だ。
割安だから買い、割高だから売った。
その後、テスラ株はさらに大きく上昇したが、教授は後悔の念を顔に出さない。
「投資において後悔とはもっとも危険な感情の1つだ。
まず、やったこと、やらなかったことを後悔しても結果は何も変わらないから、後悔しても意味がない。
2つ目は、後悔し始めると過去やったことによってこれからのやり方を変えてしまうため、後悔はたちが悪い。」
特に問題なのは2つ目だ。
仮に周囲に流されて自身のやり方を変えてしまえば、「レミング」になってしまうという。
みんなで列をなして海に身を投じるようなものなのだ。
ダモダラン教授は以前から投資哲学を確立しそれにしたがって行動すべきと説いている。
今回もそれを強く主張している。
テスラに10倍の金額を賭けて自分の投資哲学を放棄するぐらいなら、私は、私が信じる哲学を守るために10倍をあきらめる方を選ぶ。
時として、投資哲学とは、儲けのチャンスを見送ることなんだ。