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ハワード・マークス バリュー投資に必要な進化:ハワード・マークス
2021年6月21日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、単純な株価指標を用いた古いバリュー投資が通用しなくなった理由を解説し、今後の投資家が模索すべき道を提案している。


「コンピューターもオンライン(のデータ)もインターネット、データ源も、・・・、データベースも、スクリーニングのプログラムもなく、すべてが手作業だったら、と想像してみてほしい。
GMなど企業の内容を調査したければ、あなたが信じるかどうかわからないが、会社に手紙を書いてアニュアル・レポートを送ってもらわないといけなかった。
数週間後、郵送されてくるんだ。」

マークス氏がバリュー投資についてのQ&Aで、前世紀のファンダメンタリストたちの基本動作について紹介した。
ベテランの金融人・投資家ならば思い出のある動作だろう。

時間がゆっくりと流れていた時代、知性に勝る投資家が勝つのはさほど難しくなかった。

「バフェットは、オマハの部屋でムーディーズ・マニュアルと向き合っていた。
厚さ8インチの分厚い本で、一番薄い紙を用い、数千ページあった。・・・
株式市場で儲ける方法、あるいは市場にバーゲン銘柄が存在することを知る人は多くなかったから、バフェットはそれを探し有利に戦った。」

「ムーディーズ・マニュアル」とは日本の四季報をより詳しくしたものと思えばよい。
みんなが手作業で銘柄選択を行う時代、米市場はまだ非効率な市場だった。
マニュアルをめくっていくだけで確度の高いお買い得銘柄をスクリーニングすることができた。
かなりのお買い得銘柄が多く存在したから、厳選するのもたやすかったはずだ。
これは古いタイプのバリュー投資家にとっては絶好の環境だった。

ところが、今世紀に入ると世界は大きく変化した。
マークス氏は、現在を「知的」とは考えないが、人々がより多くの情報を瞬時に手にすることができるようになったと語る。
その上で、グロース投資家である息子アンドリュー氏の主張を紹介する。

「『いつでも手に入る現在の定量的情報をみんなが入手できるなら、当然それは優越したパフォーマンスにはつながらない。
卓越したパフォーマンスを上げるには、他の人が知らないことを知る必要がある。
みんなが知らない情報を知っているか(SECはみんなが同じ事実を知ることを目的としている)、情報を解釈する卓越した能力を有しているかしないといけない。
しかし、確率でいえば、あなたがそれを試みる唯一の人である可能性は低い。』」

読者が、もしも自分が誰よりも優秀と考えるなら、もちろんこうした議論に耳を傾ける必要はない。
わが道をいくだけで大成功するはずだ。
一方、自分が並の投資家、優秀だが抜きんでるほどではない投資家と考えるなら、自分の戦略の実現性を考えないといけない。
入手可能な定量的情報と解釈で、自分はどのレベルにいるのか。
自分と同じ程度の競争相手がどれほどいるのか。
もしも多いなら、成功はおぼつかない。

アンドリュー氏も、入手可能な定量的情報で優位性を実現することは不可能として、優位性の源泉を2つ提案している。

「『定性的情報についてのよりよい理解。』
私(ハワード氏)の意見では当然これはアルゴリズムからは得られない。
『あるいは、将来に関する卓越した見識。』」

ハワード氏は、アンドリュー氏の意見を正解と述べているわけではない。
とはいえ、もちろん1つの道として認めているのだろう。
画一的な答を出すのでなく、ウォーレン・バフェット氏の言葉を紹介している。

『私たちはグロース投資家でもバリュー投資家でもない。
私たちは投資家なんだ。』

マークス氏は、バリュー/グロースのどちらが優れているかの論争について、問題の根源をレッテル貼りにあると指摘する。
自らバリューとレッテルを貼った投資家が、それを狭く定義し行動しようとする。
批判する側も、狭義のバリュー投資をバリュー投資と呼んで批判する。
同氏は、これからの投資家は柔軟であるべきと説いている。

「今後数十年の投資家は、広い心を持って『魅力的な価格なら何でも買う』と言わないといけない。
過去30年のバリュー投資家は『高成長企業やテクノロジーは買わない。高PER銘柄は買わない』と言ってきた。
でも、今日日テクノロジーに依存しないどんなものを買えるんだ?」

広い心を持つためには、多くの努力・苦悩を乗り越えないといけなくなるだろう。
狭い心であることは、自動的に(有効かどうかはわからないが)強力なスクリーニングを施し、その後の作業を格段に楽にしてくれたはずだ。
それがない今、無数の上場企業から何を頼りに最善の銘柄を選ぶのか、その選別法は正しいのか、そこからの議論になる。
投資家の悩みは深い。

マークス氏はもう1つバフェット氏の言葉を引用している。

『低PER、低PSR、低PBRが高パフォーマンスの秘訣となるかは不明だ。
高PER、高PSR、高PBRをポートフォリオから排除すべきかも不明だ。』


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