海外経済

バランスシート縮小は望ましくない:ウィリアム・ダドリー
2019年9月26日

ウィリアム・ダドリー元ニューヨーク連銀総裁が、FRBの金融政策について解説している。
先週のレポ金利急騰から、今後の緩和余地まで厳しいインタビューに丁寧に答えている。


「月曜日に2つの出来事、9月15日の法人税支払いがあり、米国債入札の決済があった。
いずれも民間セクター、銀行からFRBの財務省の口座にマネーが移動した。
これが、系から銀行の準備預金を流出させたんだ。
月曜日のその後、レポ金利に上昇圧力がかかった。」

ダドリー氏がBloombergで、先週16-17日に起こった米レポ金利急騰の原因を解説した。
FRBの金融調節を担当するニューヨーク連銀の総裁を務めた人だから、本件については最高権威と言ってよかろう。
ダドリー氏の見解は、やはり法人税と国債入札による準備預金の枯渇だった。
同氏は、準備預金の枯渇の背景にある構造要因にも言及した。

「それは長い時間かけてFRBがバランスシートを縮小してきたことだ。
貨幣は拡大している。
債務上限の問題が解決し、FRBに預けてある財務省の現金の残高が増加している。
結果、銀行システムの準備預金が縮小している。」

つまり、貨幣需要が増え、政府の資金需要が増えたことで、準備預金残高が減ってしまったのだ。
規制が変わっていることもあり、FRBも銀行システムが必要とする準備預金の規模を見極め切れていないのだという。
確かに説得力のある説明であり、混乱が2日で収集されたことから、今回のケースをことさら心配する必要はないのだろう。

しかし、問題はこの先だ。
FRBがバランスシート正常化で頓挫した、つまりバランスシートはまだ拡大したままなのに、この金利急騰が起きた。
バランスシート正常化は果たして可能なのか。

「もしも、FRBが以前のバランスシートのレジームに戻るなら、毎日市場に大規模な介入を行わないといけない。
これはいいレジームではない。
現在のレジームでは、十分な準備預金が系にあり、毎日毎日何かする必要がない。
・・・こちらの方がはるかに単純なレジームだ。」

ダドリー氏は淡々と述べているが、これはかなり重大な話だ。
FRBがバランスシートを(経済等と比べ)以前と同水準まで正常化すれば、準備預金が不足すると暗示しているのだ。
これは事実上、量的緩和前までのバランスシートの正常化は不可能ということを意味しているのだろう。

確かに不思議なことがあった。
昨年第4四半期に市場が混乱した時、市場の流動性が枯渇したと騒いでいる人がいた。
FRBのバランスシートはまだ以前よりはるかに大きいのに、なぜ流動性が枯渇するのか。
局所的な話としようにも、同四半期の混乱は局所的とは言い難いものだった。
ここでのざっくりとした解釈は、長く続いた量的緩和政策の中で、金融経済が大きなバランスシート、大きな準備預金に慣れてしまったということなのだろう。
だから、それが不用意に減少すると、予想外の反応を見せるのだろう。

これが連想させるシナリオが2つある。
1つは、FRBが金融引き締めしにくいためにインフレに脆弱になりかねないこと。
もう1つは、仮に次の景気後退期などにQE再開となれば、経済はさらに大きなバランスシートに慣れていくだろうということだ。

では次の景気後退期、FRBは何をやれるのか、やるのか。
ダドリー氏は、マイナス金利採用の可能性は極めて低いと話している。

(マイナス金利政策を)実施することはできるが、2011-13年、FRBは採用しなかった。
世界中でのマイナス金利政策の経験(の成果)はおそらく相当にまちまちというものだろう。
だから、FRBが米国でのマイナス金利政策を考えるだけでも本当にハードルは高い。
特に、他の経済刺激策、つまり量的緩和とフォワード・ガイダンスがある以上はね。


-海外経済
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 その他利用規約をご覧ください。