すでに一部をお伝えしたが、GMO ジェレミー・グランサム氏の8月17日のインタビューの内容が公表されたので、興味深い点を紹介しよう。
1998-99年はいうまでもなく輝かしいバブルだった。
どんどんどんどん上昇した。
グランサム氏がBloombergのインタビューで、2000年にピークを打ったドットコム・バブルを回想した。
2000年前後のS&P500指数
グランサム氏が言及した時期とは、米国で「根拠なき熱狂」と言われた上げ相場の最終局面にあたる。
(この言葉は1996年ロバート・シラー教授らがグリーンスパンFRB議長(当時)に話し、議長が2日後の講演で用いたものだ。)
GMOは当時をバブルと考え、リスク・オフで臨むことを決断する。
先見の明のある人にしばしば起こることだが、これが早すぎた。
「この間は残虐な2年間で、企業利益も上昇した。
市場は1998年の史上最高値から飛躍的な動きを見せ、2000年3月まで一本調子で上昇した。
我が社の顧客は早すぎたことを許さず、投資の多くが打ち切られた。」
世間がバブルに浮かれる中、GMOがさっさと降りてしまった。
これをGMOの投資家は許さなかったのだ。
バブルが終わっても彼らは冷たかった。
「(バブル崩壊後も)打ち切った商品に戻ってきた投資家は1人もいなかった。・・・
私たちは2000年に損をしなかったし、2001年にも損をしなかったし、2002年もかろうじて損をしなかった。
その年までS&P 500は50%も下落したのに、我が社は3年プラスだったのにだ。
このせいで、会社の預かり資産が増えなかった。」
バブル崩壊で損をしない手柄はあっても、バブル膨張での利益を取り漏らしたことを投資家は許さなかったのかもしれない。
この逸話にはいくつもの教訓が含まれていよう。
ファンド業とは基本的に投資家から信託報酬をいただく商売だ。
だから、バブルとわかっていても最後までバスを降りない方が運用者としては有利となる傾向がある。
一般の投資家は、バイサイド(運用会社)についてもセルサイド(証券会社)と同様のバイアスがありうることを認識すべきだ。
バブル崩壊の直前でバスから飛び降りたいなら、彼らの言うことは聞かず、自ら判断しないといけないのだろう。
純粋に運用者として考える時、バブルに乗らないことが得策なのかも明示的に判断しておくべきだろう。
グランサム氏はドットコム・バブル後に半値になるのを回避したと言っている。
しかし、同氏が降りたタイミングからピークまで倍になっていなかったろうか。
マーケット・タイミングはお奨めしないが、自身で意識して何らかのルールを決めておくべきなのだろう。
グランサム氏は一般投資家にわかりやすいアドバイスをしている。
(奨めるなら)ほとんどを米国以外に投資しているグローバル・インデックス・ファンドだ。
可能なら、しばらくは米国以外に投資するものがいい。
割高なのは主に米国で、米国以外の市場は特段割高ではない。