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バイロン・ウィーン氏の魔法のDDMテーブル
2020年1月10日

ブラックストーンのバイロン・ウィーン氏とジョー・ザイドル氏がウェブキャストで「2020年のびっくり10大予想」を説明した。


年末はかなり楽観的な領域にあったが、(イラン)ソレイマニ司令官殺害であっという間に逆転した。
市場にはアップサイドもあるだろうが10%はいかないだろう。
安くはないが、楽観の領域にある一方、以前ほどには極端でもない。


ウィーン氏がウェブキャストで、今年はやや抑え気味の予想を述べた。
Net Davis Crowd Sentiment Pollのチャートを示しつつ、アップサイドはあるものの限定的との見方を示した。

なお、「ラジカル・ポートフォリオ」については2019年10月から変更はないとした。

ウィーン氏は今年の米経済について、市場予想には届かないが景気後退にも至らないと予想。
ザイドル氏はそれを裏付ける景気後退の指標を解説した。
順風満帆ではないが、景気後退の必要条件は揃っていないという。

  • 最重要指標: 平均時給の伸びはセーフだが、景気先行指数とイールド・カーブはアウト
  • 2次的指標: 失業率と企業収益はセーフだが、投資家心理と消費者信頼感はアウト

昨年起こったイールド・カーブの長短逆転については、ウィーン氏とザイドル氏で意見が明確に割れている。
ザイドル氏は警戒すべきとするが、ウィーン氏は今回はいつもとは異なる逆転であり、かつ一時的なものと疑問符をつけている。
過去の逆転は短期金利上昇によるものだったのに対し、今回は中期金利低下によるものだったからだ。
ただし、どちらの判断をとるにしても、ロジック上は景気後退がまだ起こらないという結論になるものと思われる。

この景気見通しに基づき、ウィーン氏は今年の企業収益を予想する。

「S&P 500利益の(増加率の)アナリスト予想は今年10%に近いが、意欲的すぎる。・・・
私たちは5%の方がよいと考えている。」

ウィーン氏は、コンセンサスの利益が高すぎるとする一因として、営業利益率が低下傾向にある点を指摘している。

もう1つ株価に大きな影響を与える金利については、長短で異なる展開を予想する。

  • 長期側: 債券バブルに亀裂が入り始めるとして2.5%への上昇。
  • 短期側: 景気下振れリスク等から金融・財政刺激策が講じられ低下。FF金利は1%まで引き下げを予想。

結果、イールド・カーブがスティープ化するという。

企業収益と長期金利予想が揃えば、あとはウィーン氏の魔法のテーブルの出番だ。

バイロン・ウィーン氏による「配当割引モデル」早見表(抜粋)
私たちは今年のS&P 500利益を172-174ドルと議論してきた。
・・・均衡点は3,300あたりと示唆され、現在はそれより低い。
しかし、アップサイドは大きくない。

ウィーン氏はこの早見表から、現在の市場が粗々フェアー・バリューにあると読み取る。
一方、サイクルの終わり、つまり弱気相場開始の直前には通常割高になっていると指摘。
今はまだ割高ではないでないとし、まだサイクルが続きうると暗示した。
ただし、それも条件付きである。
早見表を横に読んでいくと、付すべき条件は明らかだ。

しかし、金利が上昇すれば、この市場はとても金利に敏感だ。
・・・
だから、債券市場に気をつけろ。
そうすれば、株式市場にどんな困難や喜びが待っているかヒントが得られるだろう。

まさに金言だ。
(FPの運営元(浜町SCI)では、かなり前から日米の国債利回りの時系列データを提供してきた。
これがゆえに債券ファンドやマクロ・ファンドと勘違いされることがあるが、弊社は株式ファンドである。
読者が株式投資家であるなら、株の情報をとる前にまず金利の情報をとるべきかもしれない。
金利、とくに名目金利・実質金利を見ていけば、そこには経済や株式の情報まで詰まっているからだ。)

ウェブキャストでは、時間軸を変えた議論もしている。
2020年ではなく、今後10年の米国株市場のリターンの展望だ。
ウィーン氏は、今後10年の米国株の期待年間リターンは5%程度になると予想している。
内訳は

  • 米成長率: 約2%(人口動態1%、生産性1%)
  • インフレ: 約2%
  • 自社株買い他

この数字は、ザイドル氏が過去のS&P 500のデータで行った回帰分析と摺り合っている。
ウィーン氏は繰り返す。

次の10年での(米)株式の年間リターンは5%と予想している。
過去10年とはかなり違う景色になる。

もっとも将来の長期的な低リターンを予想する声はもはや珍しくなくなった。

足元は市場環境が目覚ましく改善したから、こうした声が伝えられなくなった。
しかし、足元の株価、特に株価倍率が上昇すれば、将来の期待リターン(率)を押し下げる要因になる。
今後も株が上昇するなら、誰も口にはしないが、将来リターンは低下するのかもしれない。

今年はザイドル氏が「びっくり10大予想」作成に参加して2年目となった。
同氏も慣れた様子が見られ、2人が互いに後ろからチクチク刺し合うような和気あいあいとした進行になった。
Q&Aでは「びっくり10大予想」の作成プロセスを尋ねるものがあった。
ウィーン氏は実に10月から準備を始めるのだという。
一方、ウィーン氏から素案を見せられたザイドル氏は、いったん預かったものの、わずか2日後には意見を求められた。
そこで
「すばらしい」
とフィードバックしたという。
神様に対する対応として当然のことだったろう。
するとウィーン氏が
「じゃあ毎週ミーティングを持とう」
と言い出したのだという。
「すごい労力をかけてやっているんだ」
ウィーン氏が「びっくり10大予想」に注ぐ情熱は並々ならぬものであるようだ。

なお、この日のウェブキャスト資料の最後にはウィーン氏の「人生の教訓」が付されている。
過去80年で学び、これからの80年で実践したいとする教訓だ。
定番の資料だが、改めて読んでみてもとてもためになる。


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