ブラックストーンが、バイロンR.ウィーン氏による1986年以来35年目となる「2020年のびっくり10大予想」を顧客に送った。
ここでの「サプライズ」の定義は「平均的な投資家は1/3程度の確率でしか起こらないと考えているが、ウィーン氏は1/2超の確率で起こると信じている事象」とされている。
以下が骨子:
- 経済は市場予想に届かないが、景気後退は回避。
FF金利は1%まで引き下げ。
包括的な通商合意はなく、トランプ大統領は自身の権限で行える刺激策(例えば給与税減税)をすべて講じようとする。 - 大統領の弾劾は実現しないが、その過程で明らかになる事実が大統領に不利に働く。
民主党が上院で過半数をとる。 - 包括的な米中合意がないまま、テクノロジー分野のバルカニゼーションが進む。
5G規格が統一されないなど、世界経済に悪影響。
米中両方が香港と距離を置き、デモが自然に収まるのに任せる。 - 自動運転車の実現見込みがさらに先へ。
実験車での事故から開発取りやめを宣言する大手も。 - 米国の指導力のなさにつけ込み、イランがイスラエルやサウジアラビアへの敵対的行動をエスカレート。
ホルムズ海峡が封鎖され、WTI原油価格は70ドルを超える。 - 投資家の熱狂でS&P 500は年内のどこかで3,500を超える。
EPSは5%しか向上しないが、金融緩和期待から中期金利の上昇が緩やかと見て株価倍率が上昇する。
ボラティリティは上昇し、年内数度5%を超える調整が入る。 - 市場の牽引役だったFAANGがアンダーパフォームし、S&P 500がアウトパフォームする。
大手テクノロジー企業に対する政治・社会からの批判が強まり、分割・規制の声が大きくなる。
「ニューヨーク・シティーのあるミレニアル世代の人物は電話を置き、他の人間とアイコンタクトをとり、脅威を受けず爽やかであることを知る。」 - 英国がEU離脱の勝利者に。
英国株市場は上昇し、英ポンドも上昇、海外からの投資が再開することで成長率も2%超に。
欧州経済は弱いままで、英国を除く欧州市場は米国やアジアをアンダーパフォーム。 - 「債券バブルは亀裂を生じ始めるが、諸外国ではマイナス金利が続く。」
米10年債利回りは2.5%に達し、イールド・カーブはスティープに。
日中が米国債入札から撤退。
経済ファンダメンタルズやインフレというより、需給によって利回りが上昇する。 - ボーイング737の問題が解消し納品され、世界の定番になる。
同株が市場のリーダーに。
さらに、それほど重要でないもの、実現可能性が高くないもの5つを挙げている:
- インドでの経済危機が和らぎ、経済成長率6%、市場は20%上昇する。
- AIが張子の虎との見方が広がる。
製造業はすでに機械化されており、これ以上仕事をAIが置き換える余地は小さい。 - ロシアで経済危機が深刻化し、社会不安が広がる。
プーチンは中国に近づき、中ロは欧米と対峙する。 - ポピュリズム、内向き思考、無秩序、不協和が広がる。
投資家が新興国市場の現地通貨建て債務を敬遠し、スプレッドが拡大。 - 北朝鮮が核開発停止を受け入れるが、既存の兵器の放棄は拒否する。
北朝鮮は脅威であり続けるが、差し迫った危険ではなくなる。
ウィーン氏の予想をおさらいしておこう。
- S&P 500: 3,500超とは昨年末終わり値3,230.78から8.3%超の上昇(昨年予想は15%上昇)。
- 米10年債利回り: 2.5%(同、3.5%未満)。
- ドル相場: 言及なし(同、横ばい)。
- FRB金融政策: 1%へ利下げ(同、利上げ・バランスシート縮小を停止)。
- 景気後退: 言及なし(同、2021年以降)。
- 金価格: 言及なし(同、1,000ドルへ低下)。
やや経済・市場へのスコープを狭めてきている印象がある。
地政学的要因・社会的要因に多くを割いたためだろう。
株価上昇幅の予想が控えめになっていること、利下げが予想されていることから、景気や市場の転換点がまた近づいたと考えているようにも感じられる。
このあたりは米時間9日のウェブキャストで言及されるのだろう。
ウィーン氏は「2020年のびっくり10大予想」策定にあたっての協力者について1月のコメンタリーの中で謝辞を述べている。
同僚のジョー・ザイドル氏が重要な役割を担ったと記している。
当初からほとんどの回での助言者としてジョージ・ソロス氏を挙げ、「市場と地政学的事項について意見をくれた」と書いている。