ハワード・マークス

 

ハワード・マークス:政策も人間も間違える

Oaktree Capitalのハワード・マークス氏のUCLA対談の第2弾、金利の先行きについて。
この対談は市場が金利上昇に怯え始めた10月に行われたものだが、当時の市場心理が現れていて面白い。


「金利について認識しなければいけない最も重要なことは、金利が不自然に低いということだ。」

マークス氏がUCLAでの対談で話した。
リーマン危機後、世界の中央銀行は世界金融危機からの脱出のために金利を引き下げ経済を刺激しようとした。
短期金利がゼロになると、量的緩和によって長期金利をも引き下げた。
このため、世界中で金利が不自然に低位に据え置かれているという。

マークス氏は、もう1つ留意すべき点があると言う。

ほとんどの人は、資本主義システムや自由な事業活動として知られる自由市場システムこそが最良の資源の配分をもたらすと信じている。
企業は、資本・労働者・ノウハウを最も生産的と考える分野に配分する傾向がある。
私はそう強く信じている。

マークス氏は、ビジネス・スクールの一員なら共鳴するはずだと聴衆に訴えた。
その上で、資本主義システムよりもこの仕事をうまくやった政府があるなら教えてほしいと問うている。
共産主義経済の破綻は、マークス氏の主張を裏づけている。
ところが、望ましいはずの資本主義システムがこの10年機能不全に陥っている。

「この10年、自由市場のマネーが失われている。
マネーの価格(つまり金利)は管理・制御され、人為的に抑制され、需給に応じて自由に変動することが許されない。」

マークス氏によれば、FRBが積極的に金融政策正常化に努めるのも、こうした状況への危機感からだろうと言う。
金融緩和が資源配分を歪めるとの心配は少なくない。
米共和党をはじめとして、スタンリー・ドラッケンミラー氏マーク・ファーバー氏ピーター・シフ氏など枚挙にいとまがない。


日本でも河野龍太郎氏などが早いうちからこの弊害を指摘していた。
マーク・ファーバー氏は、この弊害の最たるものとして日銀のETF購入を挙げている。
日本は異次元緩和によって社会主義・共産主義に向かっていると揶揄した。
ところが、政府・日銀にはそうした危機感は見えない。
よく考えてみると、規制緩和や金融緩和が意図せざる資源の誤配分を引き起こしている可能性は否定できない。
政府も日銀も自信たっぷりにバベルの塔を高くしているのかもしれない。

マークス氏は、現状を
a) 金利が不自然に低い
b) それから解放されつつある
c) 経済が良好で資本の需要がある
と分析し、今後もマネーの価格は上昇するだろうと予想した。
ただし、2006-07年のように、5年債利回りが6.5%まで行くようなことはないだろうとも話している。

だからと言って、問題がないわけではない。
金利が上がれば債券価格は下がり、金利が下がれば債券価格は上がる。

「今の金利が上昇すれば、前からの債券の価値は下がり、価格は下落する。
・・・おそらく金利は上昇し、それは債券価格の下落を意味する。
それは逃れえない。」

マークス氏は株価についてもコメントしている。
10月の株価下落の原因が金利上昇懸念だったことについての感想だ。

「なんでそれ(金利上昇)がサプライズだったんだ?
バーナンキは5年前に示唆し、2-3年前から(正常化を)初めていたじゃないか。」

金利が上昇するであろうことは2013年にバーナンキFRB議長(当時)が予告し、市場はその時、バーナンキ・ショック(Tapertantrum)として大きく反応した。
それなのに、市場は再びそのことを忘れてしまっていたのだ。
突然、パウエル議長の発言などで回想し、再び大騒ぎになった。

(母校の)シカゴ大学では、人間は価値の知性的かつ客観的な計算機だと教える。
それがどうだ。
人間は感情的で間違いを犯すものなんだ。


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