ナラティブは突然変わりうる:ロバート・シラー

ロバート・シラー教授が、ドナルド・トランプ米大統領が作り上げてきたナラティブについて解説している。
50年の長きにわたって効果を発揮してきたとしながら、盤石とはいえないと分析している。


「ドナルド・トランプ米大統領は最近のG7サミットのあいさつの最後に、集まった指導者たちに来年の会合をマイアミ近くに所有するDoralカントリー・クラブで開催すると招待した。
そのクラブのことを『フロリダ最大級で最高のボードルームを備える』『壮大な建物』のおとぎ話のような世界と形容した。
これは、トランプによるパブリック・ナラティブ(公衆に向けたストーリー)のもう1つの例だ。
このパブリック・ナラティブは半世紀近くも強まってきた。」

行動経済学の権威、シラー教授がProject Syndicateに書いている。

トランプ大統領は、来年のG7を一族が経営する施設で行う意向だという。
大統領が公務において自身の事業を使い収益を上げるのは極めて異例であり、早速批判が集まっている。
しかし、大統領が望んでいる最大のことは事業が受け取る使用料でも宣伝効果でもないだろう。
大統領が望む最大のことは、成功者として自分を大きく見せる機会だろう。

シラー教授は、大統領のこのパブリック・ナラティブが1983年の新聞記事の頃には確立されていたと指摘する。
プロレス・マットへの登場、リアリティ番組への出演などを紹介、ナラティブが活用され、徐々に強化されてきたと指摘する。


トランプ大統領が誕生した時、シラー教授は自らの胸の内は語らず、行動経済学的なインプリケーションを語っていた。
誕生直後の株高については幻想によるものと警戒し、その後の景気拡大ではトランプ大統領のナラティブの効果もあったのではと示唆した。
よくも悪くもパブリック・ナラティブが経済・市場を揺さぶっているのだ。

しかし、そのようなナラティブが永遠に持続することはない。
トランプのナラティブへの信認が終わる時、景気後退がともなう可能性が高い。

シラー教授は、景気後退期、人々はそれまでの見方をやめ、再検討する傾向があるという。
家計も企業も、好景気を支えてきた支出を絞り始める。

「そうすることの根底の理由なんて説明する必要がない。
中から湧いてくる気持ち・感情だけで十分なんだ。」

シラー教授は、すでに景気拡大が史上最長となっていることに触れた上で、米経済の強さの理由を突き詰めるとトランプ大統領の強いナラティブにあると書いている。
そして、そのナラティブが剥落するようなことになれば(創立5年で訴訟により閉校したトランプ大学と同様)支持者との関係が険悪になる可能性があるのだという。
また、退任後に被告人席に座る可能性も匂わせている。

だから、大統領は自身のナラティブを何とか守ろうとする。
自分は成功者であり、豊かなアメリカ人の象徴であり、自分にまかせておけば米経済は大丈夫というナラティブだ。

シラー教授は、予想の難しい大統領の将来をこう予想している。

彼は必ず、長く役立ってきた自身のパブリック・ナラティブを守ろうとするだろう。
しかし、過酷な景気後退はそれを打ち消すかもしれない。
経済的混沌が襲う前であっても、人々は彼の脱線、そして、彼を追いやる伝染性の新たな逆ナラティブに、より注意を払うようになるかもしれない。


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