海外経済 投資

ドル高と分散ポートフォリオ:ヌリエル・ルービニ

ヌリエル・ルービニ ニューヨーク大学教授が、3月に分散ポートフォリオとドル相場に起こった珍しい現象を大学教授らしく解説している。


金融システムの多くの部分に圧力がかかり、突然みんな現金を欲しがるようになった。
社債や株式はもちろん国債までもリスクが高すぎると考えられた。

ルービニ教授がReal Vision Financeで、3月中旬に起こったことを解説した。
教授は、通常の株式と債券による分散ポートフォリオの仕組みから平易に説明している。

市場がリスクオフになると、価格下落リスクの大きい株式が売られ、リスクが限定的な債券が買われる(≒利回りは下がる)。
株では損をするが、債券では儲かる。
リスクオフ時の株式と債券の逆相関の関係が、分散効果を生むことになる。

ルービニ教授は、こうした分散効果が2月頃には発揮されていたと話す。

「株式市場が10、20、30%と自由落下する中、債券利回りは初めは下がった。
初め2月には約1%から0.3%まで下がった。
当初の市場の反応は正常だった。」

ところが、3月9-23日「なにかおかしなこと」が起こったのだという。

「おかしなこととは、米国債市場の利回りがゼロに向けて下がるのではなく、30 bpから2週間のうちに125 bpまで上昇したんだ。
これは100 bp近い債券利回りの上昇で、指標銘柄で10%の損が出ることになる。」

ルービニ教授は、前提とする相関関係が崩れた時、分散ポートフォリオは、リスク・パリティ・ファンドなども含めて、損失につながると解説する。
これは想定されていなかったことであり、株でも債券でも損する期間だった。

(ただし、この解説は少し単純化されすぎている。
特に上げ相場の時、株式と債券が順相関となることはよくあることだ。
因果関係の議論を別にすれば、逆相関を金融相場、順相関を業績相場(の一部)と重ね合わせればわかるはずだ。
株式と債券の相関はそれほど安定的なものではない。)

今回特徴的だったのは、相関が変化したのが米国債だけでなかった点だろう。

すべてのリスク資産は、それが米国債、独国債、日本国債、スイスフラン、円、金だろうが、価格を下げ、どこにも逃げ場がなかった。
唯一の逃げ場は文字通り現金だった。
リターンはゼロだが価格が下落しない唯一のものだ。
これは私たちが見たことのないことだった。

ルービニ教授は、以上が今回の流動性ショックの顛末だったと話す。
FRBがこの問題を認識し、流動性供給を行うと、相関関係も元に戻ったという。
不足する現金をFRBが増発することで、事態が鎮静化したのだという。

「一たび市場に流動性が戻ると、少なくとも安全資産も戻ってきた。
金、米国債ほかが安全資産になった。」

ルービニ教授は淡々と、FRBが「世界一巨大な輪転機になった」と話す。
さらに、FRBの金融政策とドル相場が逆に動いたのも当然と指摘している。

ドルの流動性不足によって、ドル相場が天井破りになった。
ドルは、FRBが金融緩和しているのに、価値が下がるよりむしろ上がるという奇妙な現象を示した。
・・・これはかつて経験したことのないことだったんだ。


-海外経済, 投資
-, , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。