ドル安が米国株の弱気相場の引き金になる:マーク・ファーバー

スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏が、米経済と金融政策についての予想を語っている。
そこからドル安を予想し、それが米国株下落につながると予想した。


消費者物価のインフレがほとんど見られないのは、普通の人たちの経済が特に良好でないからだ。
私たちの経済は分断されている。
富裕層や超富裕層の経済は好調だ。
普通の人たちの経済は、欧州・日本・米国において良好ではない。

ファーバー氏が貴金属販売Money Metals Exchangeのインタビューで、世界的にインフレが見られない理由を解説した。
消費性向の高い「普通の人たち」にとっての景気があまり良くならない。
だから、消費が伸びず、インフレも進みにくい。
これが、中央銀行をある方向に駆り立てている。

「世界の中央銀行、主要中央銀行はこう言うだろう。
システムにインフレはほとんど見られないから、量的緩和あるいは資産買い入れを継続できる、と。
それはいずれも正しい。」

各国中央銀行の使命である物価安定とは、主に消費者物価を指すものだ。
現在、多くの国で消費者物価は低すぎて困っている。
ならば、中央銀行にとって、金融緩和の手綱を緩める根拠は薄い。
物価上昇の懸念がないのだから、もっと経済を刺激すべきとの意見も出てくる。
しかし、これが資産市場に大きな変化をもたらす。

しかし、資産価格においては過去も現在も大幅なインフレが存在する。
米市場、特に石油産業以外で株価が高値圏にある産業がいくつかある。
現在、世界には10兆ドル相当のマイナス金利の債券が存在する。
一種のバブル、大きなバブルの中にいるんだ。

消費者物価のインフレが起こっていないがゆえに、資産インフレが進んでいる。
中央銀行にとって、物価上昇の昂進は明確にブレーキを踏むべき理由だが、資産価格上昇は必ずしも理由にならない。
それどころか、多くの中央銀行が資産効果を金融緩和の要素として考えている節がある。

「中央銀行や政策策定者は、もしも資産バブルが本当に破裂したら、もしも株式市場が20%下げたら、もしも住宅価格が20%下げたら、もしも債券価格が20%下げたら、全世界が不況に陥ることを知っているんだ。」

ファーバー氏は、FRBが2008年にQE 1を始めた時に口にした自身の予言を思い出して言う。

『FRBは今《QEアンリミテッド》を始めたんだ。
システムが壊れるまで量的緩和を続けることになるだろう。』
そこに至るまでにはまだ数年ありそうだ。


ファーバー氏は、共和党も民主党も政府の借金を増やしたがっているとし、量的緩和が継続する可能性は高いと話す。
政策金利については、経済が鈍化し、ホワイトハウスからのプレッシャーが強くなる中、FRBは何もしないだろうと予想した。

これがファーバー氏のドル相場予想につながる。
同氏はこれまでのドル高の一因を他の主要経済との金利差によるものと考えている。

「ドルが強いのは、米経済が欧州経済より状況が良いと多くの投資家が主張しているからだ。
それはわからない。
しかし、これまでドルが強かった一因は、欧州がマイナス金利だったことだ。
独10年債利回りは現在マイナス、日本もスイスもそうだ。」

投資家がより金利の高い通貨を選んだために米ドルが買われたというオーソドックスな見方だ。
ファーバー氏は、今後も量的緩和が継続し、政策金利はさほど変わらないと考えているから、為替の見通しも自然と決まってくる。

ドルはやがて安くなると思う。
ドル安が進むにつれ、ドル安が株式市場の弱気の引き金を引くだろう。

ドルが高値圏にあるのは事実だろうから、今後のドル安を予想する人が多いのも自然な成り行きだろう。
ここで気になるのは、ドル安が株の弱気相場の引き金になるとの示唆の部分だ。
前2回の弱気相場を回顧しておこう。

米株価(Wilshire 5000、青、左)と米ドルの実効為替レート(赤、右)
米株価(Wilshire 5000、青、左)と米ドルの実効為替レート(赤、右)

  • 2000年ドットコム・バブル崩壊: 崩壊後しばらくはドル高が継続し、弱気相場の後半になってドル安に転じた。
  • 2008年リーマン危機: そもそも長いドル安局面の中で強気相場が進展し、そのまま暴落に至った。
    暴落開始からしばらくしてドルは買われ、株が底を打つとドル安に転じている。

いずれの場合もドル安が弱気相場の引き金を引いたとの印象は薄い。
むしろ、弱気相場ではドルが買われる局面があると読み取れるのではないか。
これは、ファーバー氏予想とはあまり相性がよくない。
ファーバー氏は、何か、ドルが売られ米国株が売られるような新たな局面を予想しているのだろう。


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