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ドル安が引き起こす米市場の凋落:ジェフリー・ガンドラック
2019年12月14日

ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が、為替と米社債市場に関する酷く生々しいシナリオを語っている。


「欧州で起こっているのは、保険会社のような投資家がヘッジなしで米社債を買ってきたということだ。
これが、ドル高が続いた一因だ。
彼らがヘッジしていないため、追加的なドル需要となったためだ。」

ガンドラック氏がCNBCで、安定的なドル高継続のドライバーについてコメントした。
マイナス金利政策がとられる中で、利回りに飢えた投資家がドルを買って米社債に投資してきたとの見立てだ。
この話は欧州投資家だけの話ではないだろう。
債券利回りが水面すれすれを上下する日本の投資家も、米レバレッジド・ローンなどへの投資を拡げているのはよく知られた話だ。
すべてが為替ヘッジなしではないだろうが、中には為替ヘッジをつけず高利回りを追求するトランシェがあってもおかしくない。

また、米金利が2%前後まで上昇したことは、世界の投資家の地理的資産配分を変化させたはずだ。
かつては新興国市場・日欧に向かうようなマネーの一部が米国へ向かったのも自然なことだ。
米経済が世界で独り勝ちの状況になる中、米国の投資先としての人気が一層高まったのだ。
その結果が米ドルの高位安定であり、米企業債務における過熱感なのだろう。

ガンドラック氏は従前からのドル安予想を継続し、理由を2つ挙げている。

  • FRBの利下げとドル安に相関があること。
    ガンドラック氏は、米経済が軟化する頃のドル安を想定しているのであろう。
    明言していないが、この裏には日欧の利下げ余地のなさが前提にあるのだろう。
  • 増大しつつある双子の赤字とドル安に高い相関があること。

ガンドラック氏はこれまでのマネー・フロー、債券価格、為替を説明した上で、巻き戻しが起こる時について不吉な予想を述べている。

実際にドル安が始まったら、かつ/あるいは、米社債価格が下落を始めたら、これら投資家のヘッジなしのドル保有は大きな損失を出し始める。
私の35年の経験と、投資家が損失を出し始めた時の振る舞いに基づけば、彼らは雪崩を打って売り始めると信じている。

仮にガンドラック氏の予想が当たる場合、起こることは何だろう。

  • 為替ヘッジ付きか否かにかかわらず、米企業債務の投資家は損失を被る。
    為替ヘッジなしで米企業債務に投資している外国投資家はダブル・パンチになる。
    投資家側の金融市場にいくらか悪影響が及ぶかもしれない。
  • 幅は述べられていないが、急激なドル安が進む。
    ドル安は一部企業には朗報となるが、輸入物価上昇により消費にはマイナスになる。
  • 米金融環境は引き締まる。
    これが他の米資産クラスに波及するかもしれない。

確かにあまり好ましい状況ではないのかもしれない。
しかし、こうしたことは毎度繰り返す現象でもある。
米国は基軸通貨国であるがゆえにある程度の双子の赤字は容認されるし、むしろ望ましい面もある。
米国は世界にドルを供給しなければならず、それには貿易赤字がうまく働く。
貿易黒字国が受け取ったドルはどこかに投資しなければいけないから、それが米国に戻ってくる。
時と場所を変え、米国の資産が買われる。
2000年はテクノロジー株、2007年は住宅市場だった。

ガンドラック氏は、現在の米社債市場を2006年のSIV(Structured Investment Vehicle、金融危機の原因となった)に似ているとし、守りを固めるべきと説いている。
これからしばらく投資を続けることで得られる利益などたかが知れており、その後の大きなリスクには見合わないという。
欧州でマイナス金利が解除される見込みは当面なく、今後もリスクは積み上がり続けると思われるためだ。

「ダムが崩れる時、相当に大きな流出になる。
30-40%やられるかもしれないのに、今50 bpを拾いにいく価値はない。
債券投資ではゆっくり儲かり、あっという間に損をするものなんだ。」

ガンドラック氏が見据える次の景気後退は、米市場にとってかつてない大きなもののようだ。
日本、欧州、新興国市場に米国が続くという持論を繰り返している。

次の景気後退期、米国は世界最悪の株式市場になる。
ドル安が進む。
日本・欧州・新興国市場で起こったように、私のキャリアの間に米市場が最高値まで戻ることはないだろう。
・・・
この議論の要にあるのは、激増する赤字とFRBのゼロ金利回帰によるドル安なんだ。


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