ドル危機に備える投資戦略:ピーター・シフ

Euro Pacific Capitalのピーター・シフ氏が、米ドル危機の到来を予想している。
危機時にも利益をとりうる投資としてコモディティと新興国市場を挙げている。


過去2回のバブル、ドットコム・バブル崩壊・住宅バブル崩壊では、S&P 500指数は半値になった。
現在私たちが直面しているバブルは前2回のバブルを合わせたものより大きい。

シフ氏がMoneyShowのコンファレンスでお家芸の危機到来説を語った。
同氏は何をバブルの大きさとしているのかは明言しなかったが、仮に全体の債務の規模だとすれば、確かにリーマン危機後、米経済の債務の規模は膨張を続けている。
シフ氏は、現在の市場には軽く50%のダウンサイド・リスクがあるという。

ただし、シフ氏の面目躍如たるところはこんな話で終わらないところだ。
本当の問題は株式市場が半値になることにとどまらないという。

しかし、より大きなリスクは、FRBが再びパンチボールをたたき、バブルをまた膨らますことだ。
金融緩和ですべてのものを刺激しようとしても、効かなくなることだ。
米国はドル危機に瀕している。

過去2回のバブルの背景に金融緩和と債務拡大があったのは否定できない。
それが唯一最大の理由かどうかは定かでないが、大きな要因となったのは間違いあるまい。
それなのに、そのバブル崩壊の後始末には再び金融緩和と債務拡大が用いられた。
政府・中央銀行が対処するならそれしか即効性のある強力な手段は考えにくい。
だから、毒をもって毒を制すしかない皮肉な展開になる。

シフ氏によれば、量的緩和も初めは、市場が正しく理解していたという。

「初めはみんなQEについて心配していた。
2011年に金は1,900ドルまで上昇した。
みんなQEを悪い考えと思ったんだ。」

だから、米国のQEは頓挫してもおかしくなかったが、FRBが市場を説き伏せたのだという。


「FRBはQEがうまくいくと信じ込ませたんだ。
一時的なもので、出口戦略もあり、非常時が終わればすぐに金利を正常化しバランスシートを縮小し、危機が始まる前に戻すと言っていた。」

しかし、FRBの金融政策正常化は当面実現しそうにない。
と同時に、奇妙にも市場の側がこれら非伝統的金融政策への危機感を失ってきた。
非常時対応と思われていたQEは実に3度に及び実施されることとなった。
その後バランスシートは「自動操縦」で縮小することになっていたが、これも撤回された。
利上げについても一旦停止の状態であり、今後利上げが再開されたとしても上げ余地は極めて限定的と見られている。
多くの人が、次の景気後退ではQEが再開されゼロ金利まで利下げされると予想し、さらに新たな緩和の手法を用意すべきと考えている。

シフ氏は、金融政策だけでなく、米政府の財政にも言及する。
今後急速に悪化する政府財政を維持するためにも、低金利が望まれるようになるだろうからだ。

誰もFRBが金利を正常化できるとは信じていない。
誰もFRBがバランスシートを縮小できると信じていない。
だから何もドルを支えるものがなくなってしまった。

米ドルが不換紙幣である以上、その信認を担保するのはFRBの節度ある貨幣政策だった。
非伝統的金融政策が非常時の一時的措置ならば、それが信認を揺るがすことはないはずだ。
しかし、それが慢性的に用いられるようになると信認が失われるというのがシフ氏の主張だ。

シフ氏は、危機到来の可能性が否定できない中、過小評価されている資産クラスに投資することが傷を浅くすると説く。
米市場との相対価格で見て割安な外国市場に目を向けるべきという。

「外国株や新興国市場を見たら、米市場との比較でかつてなく安い水準になっている。
・・・
もしも私のドル危機の予想が当たるなら、コモディティと新興国市場がブームとなり、投資家は儲けることができるだろう。
単に外国株が上がるだけでなく、通貨も上がるはずだ。」


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