ドル円相場95円の円高は否定できない:長井滋人氏

日本銀行で国際局長などを歴任した長井滋人氏が、大幅なドル高の可能性に言及した。
1ドル100円を割り込めば、日銀が市場に与えてきた安心感が失われ、経済・市場に悪影響が広がるとした。


「元日本銀行国際局長の長井滋人氏は、ドル・円相場が今年前半に1ドル=95円程度まで円高になる可能性があり、その時、日銀は追加緩和に踏み切るとみている。」

Bloombergが伝えている。
ただし、こうした報道では、発言の強弱まで読み取ることが重要だ。
読み進めるとこうある。

「年前半に95円程度まで円高が進むリスクは『否定できない』と述べた。」

こう書かれると、かなりの誘導尋問があったのではないかとの勘繰りも働いてくる。
それにしても「95円」という数字はどこから出てきたのだろう。
そこで、過去の為替相場を振り返ってみる。

ドル円(青)と円の実質実効為替レート(赤)
ドル円(青)と円の実質実効為替レート(赤)ドル円(青)は上が円安、下が円高。
円の実質実効為替レート(赤)は上が円高、下が円安。


ドル円相場は1973年の変動為替相場制への移行以来、円高が進んだ。
プラザ合意やバブル崩壊後、1995年一時1ドル100円を割り込んだあたりから、100円を挟んでの(大きな)レンジ相場のように見える。
一方の実質実効為替レートは、1995年に高値をつけた後、徐々に低下している。
高度成長期・安定成長期を終えた後、あたかも昔に戻るような動きにも見える。
為替に対する見方は何を見るかで大きく変わる。
日本からすれば適度の円安は心地よいが、他国からすれば今の円相場はかなり円安に見えるかもしれない。

こう見ても、1ドル95円という数字は見当たらない。
1970年以降12月までの円の実質実効為替レートの平均をとると95ポイント。
これは12月の76.36に比べて25%高い。
12月のドル円の月中平均112円から25%円高となれば1ドル85円程度となる。
25%の円高は政治的圧力がないかぎりなかなか進まないが、1ドル95円ならばかなり話が違ってくる。
トランプ政権からの圧力も含め、現実となる可能性は否定できまい。

その時、日銀は何をやるのか、やりうるのか。
長井氏は見透かしている。

「安倍政権との関係からも、日銀が何もやらないというのはないだろう。
・・・やったふりをするのだろう。」

具体的には
・フォワードガイダンス強化
・ETF買入れ増額
マイナス金利での貸し出し
を挙げた。

長井氏は異次元緩和の手柄をこう表現する。

「市場に翻弄されて過度の円高になるような状況には戻らない(と言い続け)・・・大きな安心感を与えた。」

1ドル100円を割り込むようなら、「安心感」が揺らいでしまうといい、サプライズや市場期待をツールとしてきた日銀が防衛ラインを放棄することはありえないと指摘する。

市場に振り回され、もっと円高になってしまうという恐怖心を皆が感じ始める。
その時、株価も揺らぐだろうし、実業界からの政策要望が相次ぐだろう。


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