米ドル
 

ドル円、GPIFの為替ヘッジ、ガンドラック氏の予想

28日の日経電子版で、公的年金を運用するGPIFの為替ヘッジについて伝えていた。
軽く流してはいけないニュースなのかもしれない。


年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が外国債券での資金運用で、為替相場の変動に伴う損失を回避(ヘッジ)する取引を始めたことが分かった。
対象は米ドルとユーロ建て債券で、3月末時点の残高は約1兆3千億円に上る。
市場の「クジラ」と呼ばれる巨大な機関投資家が同取引を大幅に増やすことになれば、為替相場に影響を及ぼす可能性がある。

日経がGPIFの為替ヘッジのニュースを報じている。
同記事ではGPIFが「世界最大の機関投資家」であること、3月末の運用残159兆円のうち外債が27兆円であることを紹介している。
今のところ外債の保有残に占める為替ヘッジ付き比率は5%と低い。
低いがゆえに今後の拡大を心配すべきともとれる。

公的年金を運用するGPIFとすれば、可能であれば手堅く運用したいところだろう。
しかし、日本国債の利回りは残存10年でさえマイナス。
これではとても求められるパフォーマンスを上げられない。
日銀は国債だけでなく、社債・REIT・株式ETFなど幅広い資産クラスの買入れを行っている。
この目的は量的緩和だけでなくリスク・プレミアムの縮小にある。
リスク・プレミアムとはリスク・テイクに対する報酬だから、リスク・プレミアムが人為的に圧縮されている市場とは魅力の劣る市場とも受け取れる。
こうした事情を考えれば、世の個人・企業だけでなく、GPIFも海外投資を拡大せざるをえなかった。

米市場を見れば、短期政策金利の誘導目標が2.25-2.50%(29日現在)。
日本人からすれば夢のような金利であり、円キャリー・トレードのチャンスを見るのも当然だ。
ただし、その条件とは大きな円高にならないこと。
為替リスクを嫌い、為替ヘッジすれば、ヘッジ・コストで米金利の魅力は大きく削がれてしまう。
だから、GPIFはその外債投資の多くを為替ヘッジなしとしてきた。


幸いこれまでのところ大きな円高は進行していない。
円高が進みにくくなった理由については対外投資の拡大が一因と指摘されている。
金融投資・直接投資が盛んで、投資リターン(所得収支)についても再投資される傾向にあるという。
為替ヘッジなしで対外投資が行われれば、円投・外貨転となるため、円安要因だ。

しかし、ドル円については最近円高を予想する人も増えてきた。
理由は大きく2つ:

  • 世界景気の鈍化・後退懸念が高まり、リスク・オフの円高が心配される。
  • FRBの利上げサイクルが終わる可能性が高まり、利下げサイクルとなればドル安要因となる。

GPIFがこうしたリスクに対応しようとしたなら、至極理にかなったことと言える。
クジラがヘッジなしからヘッジ付きに転換するなら、それが及ぼしてきた円安要因が剥落する。
日経はさらりと書いている。

実需取引に関連する日本の18年度の経常黒字額は19兆4千億円で、GPIFのヘッジ残高は1割弱の規模がある。

決して小さくない規模と言いたいのだろう。
また、こうしたことを考えるのはGPIFだけではないだろう。

ジェフリー・ガンドラック氏は5月、ドル安が米国債市場のリスクを増大させると警告した。
外国投資家が為替ヘッジなしの米国債投資を行っているため、米ドル相場が軟化した場合に為替損を嫌って米国債が売られるというシナリオだった。

しかし、GPIFの行動や低位にある米長期金利から見えてくる投資家の行動はまだそこには至っていないようだ。
投資家はドル安になる前に為替ヘッジする道を選んだのだ。
この変化が広まれば、じわじわと円高ドル安圧力となるのかもしれない。
さらにリスクなのは、ヘッジ・コストの上昇だろう。
ヘッジが割高となれば、今度はいよいよ投資家は米国債を売ることを考えるだろうからだ。


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