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テック企業がフィリップス曲線を破壊した:モハメド・エラリアン
2019年5月22日

Allianz首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、米経済にAmazon・Google・Uberがもたらした変化について解説した。
現時点ではフィリップス曲線の関係は成立していないように見えると語っている。


米国にインフレが起こらない理由は、Amazon、Google、Uberの組み合わせによるものだ。
Amazonは中抜きでのコスト削減を意味し、ほとんどの人から価格決定力を奪っている。
Googleは誰でも検索を可能にし、検索コストはとても安く、これも価格決定力を奪う。
・・・Uberは既存の市場に乗り込んできて、価格を押し下げる。

エラリアン氏がYahoo Finanaceで、米国においてインフレが進みにくい構造的要因を解説している。
これら3つの力は極めて強く、かつて信じられていたメカニズムが機能しない状況になっているという。
そのメカニズムは、失業率が下がれば賃金が上昇し物価も上昇するというフィリップス曲線の関係だ。

「経済の基本的な関係が壊れてしまった。・・・
背景にある関係性に完全な変化があり、関係式がかつてほど正確でなくなったことを意味している。」

FRBのデュアル・マンデートは物価の安定と雇用だ。
この2つにはトレードオフがあるから、FRBの目標を言い換えるとこうなる:
物価の昂進を招かない範囲で雇用を最大化させよ。
目下、米経済で物価上昇が問題となるような気配はそう大きくない。
2%物価目標を大きく超えていくようには見えない。
だから、もっと金融緩和を強化すべきとの声も出てくる。

妙に感じられるのは、市場の安定がFRBの主たる使命ではないことだ。
特に、イエレン議長時代までのFRBには強く感じられる考え方だった。
金融緩和が消費者物価、資産価格に与える影響は大きく異なる。
消費者物価を押し上げる力はかなり小さくなっているが、資産価格を押し上げる力は顕著だ。
だから、消費者物価を目安に金融緩和を続けると、資産価格はバブルに向かってしまう。
ドットコム・バブルにもサブプライム/リーマン危機を引き起こした住宅バブルにもそうした性格があったのは否定できない。

物価を目安にするとアクセルを踏みすぎてしまうなら、何を目安にすればいいのか。
1つのアイデアは実体経済を反映するとされるGDPだろう。
しかし、これにも同根の小さからぬ問題が潜んでいる。
GDPは経済厚生を表すとは限らないからだ。
Googleなどに代表されるイノベーションがタダまたは極めて廉価なサービスを生み出し、その効用をGDPが捉えられていない可能性がある。
もしも、これが真実だとすれば、私たちが見ている経済成長率は過小になっている可能性がある。

インフレでもGDPでも共通しているのは、私たちが数字を過小にみている可能性があるということ。
結果、金融・財政刺激策が過多になっている可能性がある。
インフレが進んでいないのだからいいじゃないか、との意見もあろうが、そうとも言えない。
本来ならアクセルを元に戻すところを戻さなければ、次の景気後退期に踏み込む余地がなくなってしまう。

いやいや、インフレはともかく、GDPを過小に見ているというのは、生活者の実感からかけ離れている、という意見もあるだろう。
しかし、GDPというのは全体のパイの数字にすぎない。
一般の家計の実感と乖離があるというなら、それはパイの切り分け方に問題があるのではないかと疑ってみるべきだ。
つまり、経済の主たる問題は全体のパイの話ではなくパイの切り分け方の問題なのに、政府・中央銀行が前者にばかり過度に資源投入している可能性だ。
滴り落ちることのないトリクルダウン政策に固執している可能性だ。

世の中では中立金利が低下したことが問題視され、結果、政策金利がゼロ金利制約につかまっているという話になっている。
それは事実ではあろうが、全体像とは限らない。
それと同時に、とにかく刺激策を求める社会が、金融政策も財政政策も常にふかし続けることを望んできたのだろう。
問題は、こうしたアプローチが本当に持続可能であるかだ。

エラリアン氏の話に戻ろう。
同氏は構造変化を指摘しつつも、これが恒久的な変化なのかどうか態度を保留している。

市場とは毎年繰り返すことを前提にしている。
もしそうなら金利は動かない。
しかし、それが一時的なものにすぎないなら、インフレが戻ってきて金利が上昇を始めるだろう。


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