ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、好調な米市場の背景にあるロジックを解説し、2000年を髣髴とさせる不吉な指摘をしている。
一番重要なことから話そう。
それは、12月半ばにはとても予想していなかった、民主党による上院過半数だ。
そして、もっと驚いたことに、今ウォール街がこれにとても前向きに反応している。
シーゲル教授は今年初めてとなるウォートン・ビジネス・ラジオで、ジョージア州上院選決選投票についてコメントした。
民主党が両議席を獲ったことで議席数は50対50となった。
上院議長である副大統領を合算して、民主党が実質過半数を獲得、あまり予想されていなかったトリプル・ブルーが実現することとなった。
シーゲル教授は以前から、民主党やバイデン次期大統領の掲げる政策には市場への影響から見て2つの要点があると説明してきた。
- 財政刺激策: 市場にポジティブ
- 増税: 市場にネガティブ
まだ民主党の旗色が悪かった頃、シーゲル教授は後者を強調していた。
支持する共和党に勝ってほしかったという面もあったかもしれない。
ところが、結果は民主党のトリプル・ブルー。
さらにトランプ支持者による暴動のおまけまでついたのに、市場はトリプル・ブルーを好感しているように見える。
現在の強気相場の局面では、株式市場は前者を重く見たようだ。
昨年話したように、バイデンが大統領だろうが、なかろうが、今年の市場は上昇するのだろう。
流動性こそが市場において何よりも重要なのだ。
そして、マネーサプライと連邦政府支出はさらに勢いづく可能性の方が高い。
要は、流動性がすべてを正当化する相場になっているということのようだ。
一方で、シーゲル教授は、法人増税が今年中に議会で決定されると予想する。
足元の経済状況を見て先延ばしされるとの見方は期待外れに終わるという。
上院が僅差であることから増税幅はさほど大きくならないとしながらも、増税による税引後利益の減少が一部の熱狂を冷やすのを覚悟すべきという。
シーゲル教授は、CNBCで米市場が今年10-15%上昇すると予想した件についても解説している。
「一部の株が目もくらむような高値に上昇しているものの、全体のバリュエーションは2021年の利益予想に対して22倍であり、実際の利益は予想を上回ると見ている。
ブームが来て、流動性が来ると、S&P 500のEPSは現在のアナリスト予想165ドルではなく170-175ドルになるだろう。」
予想PERは22倍とやや高めの水準にあるが、EPSの改善により株価に上昇余地が生まれるとの予想だ。
その他、過去2週間の注目点が挙げられている:
- 米国債: 「投資家にとって最悪の投資対象。・・・バイデンの政策でさらに悪化する。」
- ドル安進行中。
- 新興国市場: 上昇中。「外国市場をあきらめてはいけない。」
- バリューがグロースをアウトパフォームすると予想: バリュエーションの差による交替。
このポッドキャストでは、シーゲル教授はとても不吉なテーマを語っている。
バブルが発生しつつある。
テスラやビットコインは、最終的に弾けるまではるかに上昇する可能性がある。
シーゲル教授は明確にテスラとビットコインを例示してバブルが発生していると指摘している。
(もっとも、みんな知っていることではあろう。)
教授はビットコインについて、金に向かうはずの資金がビットコインに向かっている面があると推測している。
もちろん肯定しているわけではない。
シーゲル教授は最近、金について前向きな言及をしているが、長い目で見ればファンとはいいがたい。
ましてや暗号資産はなおさらだ。
「彼らは後悔することになると思し、この傾向は逆転すると思う。
でも、みんな知っているように、こういうトレンドは経済的に正当化できるよりはるかに行き過ぎてしまうものなんだ。」
シーゲル教授は、市場の一部にバブル特有の現象が起こっていることを認めている。
教授の言動を長らくフォローしてきた人は良く知るところだが、教授はドットコム・バブル絶頂の2000年3月、テクノロジー・セクターがバブル状態にあると警告している。
結果的に、まさにその3月がバブル崩壊の始まりだった。
シーゲル教授は、何が崩壊を引き起こすと予想されるか尋ねられている。
ビットコインでいえば、規制、政府発行デジタル通貨、違法行為など枚挙にいとまがないという。
何でもよく、こうしたことを連想させることがあれば、投機熱を壊す可能性がある。・・・
それがいつ起こるかは誰もわからない。