アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、米国株市場の高値感やゲームストップ株のショート・スクイーズについてコメントしている。
現在の市場は高い値がついている。
つまり、完璧を前提とした価格だ。
金利は低いままで、経済は回復し、企業収益は上昇するという前提になっている。
《バリュエーション学長》がCNBCで、現在の米国株市場の高値感を指摘した。
(教授は出演に先立ち、現状のS&P 500指数のバリュエーションを公表している。)
重要な要因がすべて良い結果になることが前提とされているという。
しかし、ダモダラン教授によれば、これら前提には内部矛盾がある。
みんなが言うように経済が強く回復するなら、金利が低いままで済むだろうか。
FRBがどうにかして金利を望む水準に保てるというのは、私からすれば幻想にすぎない。・・・
私はこの四半期が険しい道になると予想しており、シートベルトを締め直したところだ。
経済や企業業績が改善すれば実質金利やインフレには上昇圧力になる。
だから、低金利・高成長・好業績の共存は難しい。
ダモダラン教授はいつものように温和そうな笑顔で毒を吐く。
インフレが3%になってもFRBが金利を1%に維持できると信じている人がこの宇宙にいるだろうか?
私は信じない。
ダモダラン教授は、この回復と金利上昇のジレンマが「市場にとってとても現実的な危険」だと指摘する。
にもかかわらず、しばらくは企業収益が回復する中で割高な市場が継続する可能性もあると話す。
ところが、この場合は新たな困難が待っていることになる。
2020-21年にもっと企業収益が回復するとの前提で市場を評価すると、株式リターンとして歴史的に低水準である5-6%を得るのも困難になる。
つまり、高値が継続する場合、それがゆえに将来の期待リターンが下がってしまう。
結局(刈り取りだけを残す人を除けば)株式投資家にとってあまり嬉しい状況にはないのだろう。
ダモダラン教授は、ショート・ポジションが積み上がっていたGameStopなどの銘柄でショート・スクイーズが起こっている現象についてコメントを求められている。
教授は売り方・買い方の両方に共感を覚えないようだ。
とりわけ、SNSで集まり買いを仕掛ける買い方について首を捻る。
「ゲームの終わりは何なんだ。
これから何を得たいんだ。
いくつかヘッジファンドを破綻させたいなら、それはできるかもしれない。
でも、買い方は本当にAMC、GameStop、ブラックベリーをポートフォリオに入れたいのか?」
ダモダラン教授は、ショート・スクイーズが起こった銘柄について深刻な構造問題が存在すると述べた。
だからこそ売り方はショートを仕掛けたのだ。
(ちなみに教授は、売り方が十分な軍資金もなくポジションを取った点も批判している。)
ダモダラン教授は、株価を押し上げても構造問題は解決しないと指摘する。
その上で、買い方がテスラ株でのショート・スクイーズから誤った教訓を学んだようだと語った。
テスラとGameStopの違いは、それに同意するかどうかは別として、テスラを買い支える人たちがテスラが素晴らしい会社になると信じている点だ。
みんながモールに戻ってきて、GameStopが怒涛の回復を果たし、AMCが未来の映画館ビジネスになると考えている人なんているだろうか?