海外経済

テイパータントラム2.0が心配事No.1:ケネス・ロゴフ

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、コロナ・ショックから立ち直り再びテイパータントラムが発生した場合に新興国に及ぶ打撃について心配している。


経済回復はコロナワクチンと同様、今後2年間世界に均等に配分されることはないだろう。

ロゴフ教授がProject Syndicateで、パンデミックからの脱出に向かおうとしている世界がたどる道について解説している。

途上国・新興国はそもそも財政・金融政策による下支え策の規模が小さかった。
さらに、今後ワクチン確保において買い負ける懸念がある。
結果、先進国より経済回復が遅れる可能性が高い。

ロゴフ教授は、前回の危機(リーマン危機)と今回の危機を比較する。

「2008年の金融危機までの時期、新興国経済は先進国に比べて強いバランスシートを有していた。
しかし、今回の危機に入る時、新興国経済ははるかに大きな民間・公的債務を抱え、はるかに脆弱だった。
先進国経済のゼロ近傍の金利がなければ、深刻な問題に陥っていただろう。
そう(先進国のゼロ金利)であっても、アルゼンチン・エクアドル・レバノン等、ソブリンのデフォルトが増えてきた。」

IMFでチーフエコノミストを務めたロゴフ教授の視点はグローバルだ。
これは、同じく同職を務めたラグラム・ラジャン教授らにも共通する。
新興国や途上国にも目を向けるのは当たり前。
これらを先進国との関係性において論じるのだ。

実際、『テイパータントラム2.0』は間違いが起こりうることのリストのNo.1だ。
もしも起これば(あるいは、いつか起こると)新興国市場だけが苦しむのにとどまらない。
2013年のテイパータントラムは、FRBがいつか金融政策を正常化すると示唆し始めたことで、新興国市場からの大量の資金流出の引き金を引いた。

テイパータントラム1.0で起こったのは、国内リスク資産の価格急落だけではない。
先進各国の超低金利に支えられた新興国市場への投資が巻き戻ったのだ。
現在も先進各国はゼロ金利。
利回りを求める資金は新興国市場へ向かっている。
それが、新興国を助け、現地の資産価格を押し上げている。
テイパータントラム2.0が起こればどうなるか。

テイパータントラム2.0はロゴフ教授の心配事のNo.1になっている。
教授は、FRBが物価平均目標を採用し、2%物価目標のオーバーシュートを許容していること、金融緩和が長く続くとのフォワード・ガイダンスを続けていることを評価しながらも、警戒を緩めない。
何か良いこと(パンデミックの制御、経済・インフレの急回復)が起これば、FRBのゼロ金利解除が前倒しになりうるためだ。

そうした動きの資産市場への波及効果は強者と弱者を分け、とりわけ新興国市場を厳しく打ちのめす。
同時に政策決定者は、米国においても、最終的に倒産の増加やリストラの発生を許容せざるをえなくなる。
回復の上げ潮は不可避だが、それはすべてのボートを浮き上がらせてくれるわけではない。


-海外経済
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。