ダニエル・グロー:日本の隠れた成功

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欧州政策研究センターのDaniel Gros氏は、ディスインフレ下の日本経済が異例の成功を収めてきたと考えている。
そこから学ぶべき教訓を3つ挙げ、2%物価目標の重要性に疑問を投げかけている。


「一般的な見方とは逆に、日本はこれまで、急速な高齢化とインフレの欠如にもかかわらず、異例なほど経済成長を遂げることに成功してきた。」

グロー氏はProject Syndicateにこう書いている。
その見方は世界とも日本とも異なる。
明らかに日本のこれまでを好意的に捉えている。
グロー氏は、1人あたりGDPに目をとらわれすぎると本質を見失うと考え、GDPの生み手となりうる生産年齢人口・労働力人口にも目を向けるべきという。

実際、日本の生産年齢人口あたり経済成長は2%近い。
米国や欧州にくらべはるかに高い。
米経済は2000年以降35%超も成長してきたが、その生産年齢人口も大きく上昇し、生産年齢人口あたり年成長率は約1%にすぎない。

グロー氏はこの要因を労働力人口(就業者+求職者)の増加にあると解説している。
労働参加率(労働力人口/生産年齢人口)とその改善度で、日本は欧米を上回っているという。
つまり、日本は働ける人をなるべく働かせることに成功したわけであり、一因は安倍政権を始めとする歴代政権の功績だろう。
(もちろん、働かざるをえなくなった人口の増加も一因だ。)


グロー氏は、日本の経験から教訓を学ぶべきという。
欧州も日本と同様、人口オーナスに見舞われるのは必至だ。
欧州は日本に比べれば格段に移民に寛容だったが、近年はそうも言えなくなっている。
加えて、欧州と日本では経常黒字対GDP比率の水準が似ているのだという。
グロー氏が引き出した教訓はこうだ:

  • 「日本のインフレなき成長を考えれば、ECBはその『2%近い物価目標』が結局はそれほど重要でないことを認識すべきだ。
    ・・・
    ECBは、インフレの目に見えた上昇もなしに大量の国債買入れを続ける日銀の後を追うことはできない。」
  • 貯蓄超過が大きければ国内でのファイナンスが可能なので、莫大な公的債務を維持しうる(ただし、望ましいことではない)。
  • 低成長経済では、債務対GDP比率はあっという間に制御不能になりかねない。

いい点も悪い点も教訓にしたというところだろう。
FRBやECBが金融政策正常化に動いたことは、2%物価目標が金科玉条の目標ではないことを示す傍証だ。
世界では、経済にとって何が本当に重要なのかを見直す機運が高まっているようだ。

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